【どろろ】推しの相棒になった件について 3【百鬼丸】

袖振り合うも多生の縁 ページ13

「違うって。その人、おいらより、ずっと確かな記憶を持ってるみたいでさ。忘れられない子がいる、って」

「そう、なんだ……」



　あれ？わたし、ホッとしてる？わたしは自分の感情がまったく別人のものな気がして怖くなる。どうして安心してるんだろう。どうして、どろろの言うそのひとがこんなにも気になるんだろう。何かを忘れているような気がする。何か、とても大切なことを。



「わたしもいつか会いたいな……そういう繋がりのあるひとと」

「姉ちゃんが願っている限りきっと会えるさ」

「そうかな？ファンタジー大作映画じゃあるまいし」

「確かに。その頃にはお互いヨボヨボの皺だらけになってからだったりして」

「それは嫌だな……ロマンチックな雰囲気にはなれなさそうだ……」

「そのときお互い結婚してたら、とんでもないドラマになったりして」

「倫理的にあかんやつじゃん」



どろろは笑って、ともかく、と言った。



「会えるよ。Aの姉ちゃんならきっと。袖振り合うも多生の縁って言うからな」

「袖ね」



　わたしは自分のTシャツの裾を見た。会えるだろうか。いや、きっと、会える。そういうことにしておこう。




*



　どろろとの別れは名残惜しいけど、駅はすぐそこというところまで来てしまった。最後の充電で携帯を見ると、先に帰ってるから電車で帰ってこいとのラインが入ってた。パパもママも娘に信頼を置き過ぎだろ。まあパスモあるから帰れるけどさ。



「どろろ、ほんとにありがとね」

「いいってことよ。これも何かのよしみだって」

「だね」





そして、私は階段を。

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