これを伏線と呼びます ページ8
今日も長い一日だった。さあて寝るか。先に眠りこけている百鬼丸の腕を持ち上げて入ろうとすると、「よう」と誰かに声をかけられる。誰かって……誰だ?わたしがバッとふりむくと、2メートルほど先に背の高い男がいた。笠をかぶっていて顔がちっとも見えないのが、また不気味さを助長していた。室町にしては異様なくらいの長身で、180cmくらいある。足音一つ立てずに向かってくるところが妖怪じみていてゾッとする。
「来ないで」
「……」
「これ以上に近づいてきたら、その瞬間あなたを切ります」
「そうかい。やれるもんならやってみな。よそ者にしては威勢がいい」
「よそ者……?」
「この世界の者じゃないだろ。よそ者以外になんという?ちなみに俺も同じよそ者だ。いや半端者、と言ったところかな」
どうしてそれを。だけど聞いたってまともに教えてくれる気がしなかった。その男はそういう雰囲気を漂わせていた。
「忘れるな。お前がどこの者だかな」
「……片時だって、忘れちゃいませんよ」
「いや忘れてるね。だって元の世界に帰るっつうことを本気で想定してねえだろ?」
「……それがいつか、知ってるんですか?」
「んな訳ねえって。俺だって知らねえよ。こいつは誰も予想がつかない」
男は着物のたもとから林檎を出すとガブリとかじりついた。「お前も食うか?」って食べかけのものを差し出される。冗談じゃない。
「おいおい。せっかくそそる顔してんのに、そんなしかめんじゃねえよ」
ヘラヘラという笑い方が気に障る。林檎の芯をぽいと捨てて近づいてくる。目にも止まらない速さでわたしの刀を奪うと、顎を片手で掴んできた。顔をむりやり上に向かされて、じっくりと眺められる。むらさき色の瞳をしているのが見えた。「ふうん」。それが感想だった。
「使用済みだからいいや」
そうとんでもないことを抜かして、わたしの顔を解放した。使用済み……使用済みって、
「……悪かったな!処女じゃなくて!!」
むきになって叫ぶと男が楽しげに笑って、森の奥に消えていった。
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有希(プロフ) - 月兎さん» お久しぶりですー!この鬼神みある百鬼丸をカッコいいと…ありがとうございます。目線が変わっても感情がよく読み取れない、本当のところは何を考えてるんだろう、と気になってしまう、そんな風に描けたらと思うております。夢主の答え待っててくださいね。 (2019年6月26日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
月兎 - お久しぶりです。あの男性に連れていかれた夢主さん大丈夫でしょうか?連れさられた夢主さんを助け出す百鬼丸カッコいいです。明日の0時から最終回……目が離せません。夢主さんが現代に帰るのか帰らないのか、夢主さんの答えが気になります。更新頑張ってくださいね。 (2019年6月23日 17時) (レス) id: fdb5669a18 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - この小説のためにさん、お久しぶりです。コメント嬉しいです。感無量です。ありがとうございます。どうぞアニメが終わっても、この作品の結末までつきあってください。夢主と百鬼丸とどろろの行く末見届けてください。よければまたコメントしてくださいね。 (2019年6月21日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 星の桜さん、またコメントありがとうございます。どろろ最終回いよいよですね。何だか今からどきどきしてます。テスト関係でしばらく更新できないので、待っていただけると嬉しいです。私はタオルケットで挑む予定です。 (2019年6月21日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
この小説のために - 久々に見に来て、たくさん更新されてて、嬉しい限りです!やはりこの作品が私の中で一番です!どろろ最終回にあたり、この作品にも終わりがやってきてしまうのかと思うと、寂しいですが、夢主の行く末を見たいのもたしか……。心がごちゃごちゃだぜ!! (2019年6月18日 23時) (レス) id: 94dd1e54ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希 | 作成日時:2019年4月7日 12時