検索窓
今日:16 hit、昨日:10 hit、合計:195,223 hit

. ページ23

仮面越しに、楽しげに笑う。

「ま…むつかしい話はやめて、気持ちいいことで頭からっぽにして、楽しもうぜ」

「百鬼丸の顔で言うなよ…興奮する」

「興奮すんのかよ…あ」

近い顔を、更に寄せる。

「そいや、言いそびれたんだけど」と、明日の朝ごはんを告げる調子で、言った。


「元の世界に戻ったら、こっちの世界での記憶は全部、消える」



「…ここでの、記憶が?」


「そ。よくある話だろ。
あと、何かのきっかけで思い出すだとか、素敵な作り話に賭けんなよ。
綺麗さっぱり消えるっつうの。
何の跡形もないっての」

「て言うか、そんな空想すらできねえだろうな。だって全部、なかったことになるし」と、へらへらと続ける。

「ありえない。信じない」

「言うと思ってたぜ。んでも、こいつは変わりようのない事実なんだよ」

「まだ起きてもないことを事実って言うんじゃないよ。私がひん曲げてやるから」

「は!」と、大きく笑った。

「言ってろ。言うのは自由だからな」

足に置かれていた偽物の義手が、上へ上へと這う。

ぺしんと叩く。

百鬼丸の顔だと、どうもやりづらい。

「にしてもよ、やっぱり室町より現代のがいいよな。
命ごろごろ転がってるし、食い物足りないし、携帯ないし、やらしー雑誌もないし。
俺らからしたら、何の味気もねえ」

「まあね…でも私、ここに来れて、わりと感謝してるよ」

「お前の嫌いな綺麗事か?」

「や、まじで」

だって私、知らなかった。

「這ってでも生きるべきなんだなぁ、ってこと」

どろろは小さくして、泥棒になった。

みお姉は、春を売った。


「皆、生きるために戦ってる。
きっと敵は、侍っていうより。
時代だ。
戦なんだ」


醍醐景光は国の安寧のため、鬼神に我が子を捧げた。イタチは武士に屈した。

誰しも、根本は同じだった。

生きたい、という一心。

「どんなに惨めで、どんな目にあったって、どんなことしたって、這いつくばってでも生きようとする。
その貪欲さ。
その、人間らしさ」

私も、そうありたいと思った。

「私も戦うよ。現代に帰ったとしてもさ」

これだけは忘れたくないなぁ、とこぼした。

東の空が白んできた。

.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (189 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
261人がお気に入り
設定タグ:どろろ , 百鬼丸
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

有希(プロフ) - 月兎さん» お久しぶりですー!この鬼神みある百鬼丸をカッコいいと…ありがとうございます。目線が変わっても感情がよく読み取れない、本当のところは何を考えてるんだろう、と気になってしまう、そんな風に描けたらと思うております。夢主の答え待っててくださいね。 (2019年6月26日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
月兎 - お久しぶりです。あの男性に連れていかれた夢主さん大丈夫でしょうか?連れさられた夢主さんを助け出す百鬼丸カッコいいです。明日の0時から最終回……目が離せません。夢主さんが現代に帰るのか帰らないのか、夢主さんの答えが気になります。更新頑張ってくださいね。 (2019年6月23日 17時) (レス) id: fdb5669a18 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - この小説のためにさん、お久しぶりです。コメント嬉しいです。感無量です。ありがとうございます。どうぞアニメが終わっても、この作品の結末までつきあってください。夢主と百鬼丸とどろろの行く末見届けてください。よければまたコメントしてくださいね。 (2019年6月21日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 星の桜さん、またコメントありがとうございます。どろろ最終回いよいよですね。何だか今からどきどきしてます。テスト関係でしばらく更新できないので、待っていただけると嬉しいです。私はタオルケットで挑む予定です。 (2019年6月21日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
この小説のために - 久々に見に来て、たくさん更新されてて、嬉しい限りです!やはりこの作品が私の中で一番です!どろろ最終回にあたり、この作品にも終わりがやってきてしまうのかと思うと、寂しいですが、夢主の行く末を見たいのもたしか……。心がごちゃごちゃだぜ!! (2019年6月18日 23時) (レス) id: 94dd1e54ca (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:有希 | 作成日時:2019年4月7日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。