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百鬼丸の寝息を聞きながら、脱ぎ払った着物を着つけた。

私も寝るか、と、造り物の腕の中に入ろうとした時。

「久方ぶりだな、よそ者」

と、タイミングを見計らったように、姿を現した男。

「…こんな夜更けに何の用だよ」

「こんな夜更けにしか話せねぇ話、しに来た」

へらへらと笑い、行灯を持ち上げてみせた。

どういう仕掛けなのか、男が手を振ると、火が灯る。

依然として、笠で隠れた目元は見えない。

「なんつーかよ」と、切り出して。

「お前は、大事なことを隠すのが上手いよな」

「女は秘密が多いほど、魅力的だろーよ?」

違いねぇ、と男は笑った。

「でもよ、だーいすきな相棒相手には、隠さなくてもいいんじゃねぇの?」

「野次馬に何がわかるんだっての」

「あっそ。てっきりあいつには、何でも言えるんだと思ってた」

「何でも言えるなら、とっくに言ってる」

寿海さんが、そうであったように。

私も百鬼丸が、大切だから、大切過ぎて、一番大事なことだけは、言えなかった。

私が別世界から来た、いつか帰る存在だなんて。

「ふうん」と、聞こえたかと思えば、男が背後に回っていた。

太刀をちらつかされ、動けなくなる。

それをいいことに、片手が胸の辺りに這った。

ぜってー斬る。

「俺も、お前の嬌声聞きてぇな」

「断るし、あんたに聞きたいことあったんだわ」

「答えられる範囲なら、いいぜ」

胸から手を離す気はないらしい。

ぜってー斬る。

「私がここに来た、本当の理由は、何なの?」

「お前がここに来た理由?んなの、決まってんだろ」

「言って」

「味見だよ。たまたま選ばれて、別の世界の味見を、ちょいと、プレゼントされただけだ」

唐突に明かされた真実。

一瞬、息が止まる。

無理矢理、呼吸を再開して、聞く。

その言い方からして、多分。

「…よく、あるの?」

「そんなに珍しいことじゃねぇよ。俺は何人も見てきたぜ。室町だと…三人くらいか」

「そんならあんた、私にばっかりつっかからないで、その人たち構いに行けよ」

「無理。二人は死んで、一人は気が狂った」

唇が震えた。

「だから俺はお前に興味があるんだよ。
急に現代から室町に送られて、元気にたくましくやれてる、お前にな」

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有希(プロフ) - 月兎さん» お久しぶりですー!この鬼神みある百鬼丸をカッコいいと…ありがとうございます。目線が変わっても感情がよく読み取れない、本当のところは何を考えてるんだろう、と気になってしまう、そんな風に描けたらと思うております。夢主の答え待っててくださいね。 (2019年6月26日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
月兎 - お久しぶりです。あの男性に連れていかれた夢主さん大丈夫でしょうか?連れさられた夢主さんを助け出す百鬼丸カッコいいです。明日の0時から最終回……目が離せません。夢主さんが現代に帰るのか帰らないのか、夢主さんの答えが気になります。更新頑張ってくださいね。 (2019年6月23日 17時) (レス) id: fdb5669a18 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - この小説のためにさん、お久しぶりです。コメント嬉しいです。感無量です。ありがとうございます。どうぞアニメが終わっても、この作品の結末までつきあってください。夢主と百鬼丸とどろろの行く末見届けてください。よければまたコメントしてくださいね。 (2019年6月21日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 星の桜さん、またコメントありがとうございます。どろろ最終回いよいよですね。何だか今からどきどきしてます。テスト関係でしばらく更新できないので、待っていただけると嬉しいです。私はタオルケットで挑む予定です。 (2019年6月21日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
この小説のために - 久々に見に来て、たくさん更新されてて、嬉しい限りです!やはりこの作品が私の中で一番です!どろろ最終回にあたり、この作品にも終わりがやってきてしまうのかと思うと、寂しいですが、夢主の行く末を見たいのもたしか……。心がごちゃごちゃだぜ!! (2019年6月18日 23時) (レス) id: 94dd1e54ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:有希 | 作成日時:2019年4月7日 12時

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