大団円になりゃいいんだよ ページ12
それはわたしの知らないどろろだった。まっすぐで強くてまぶしくて、直視できないくらい綺麗な女の子。そんなことを考えていてくれたなんて知らなかった。今日は泣いてばかりだなぁ。わたしは崖がくずれる直前のタイミングでようやく穴ぐらに戻った。ちゃんと謝りたくてモジモジしているわたしに寿海さんが寄ってきた。よしよしと頭を撫でられる。それからギュッと抱き寄せられる。そうだ。わたしはずっとあなたとケンカしたかったんじゃなくて、こうしてほしかったんだ。
「A、すまなかった」
「寿海さ、」
「いい。謝らなくて」
「……」
「なぜあそこまで怒ってしまったのか、ワシも不思議だった。だけど今ようやく理解した。ワシはお前たちのことをずっと家族と呼びたかったんだ。だけど許されないと思ってできなかった。ほんとうは、ずっと、ずっと、」
寿海さんの目から涙があふれた。わたしは夢を見ているような気分で寿海さんの背に手を回した。どろろが気をきかせてくれて、百鬼丸と奥の部屋にひっこんでいった。寿海さんは声を押し殺したけど、触れたところから震えを如実に感じた。
「……寿海さん」
「ああ」
「例えば百鬼丸とわたしの間に子どもができたとしたら、喜んでくれる?」
「……いろいろと聞きたいことがあるが、A、百鬼丸とできるのか?お前が教えたのか?」
「うん……怒る?」
「なぜ?怒らんよ。お前のことだから求められない限りそうはしないだろう」
「さすがおっかちゃん」
「誰がおっかちゃんだ」
寿海さんはわたしを膝の上にのせたままユラユラと揺れた。なんだか子どもをあやしているみたいで恥ずかしい。そりゃあ彼にとってはいつまでも子どもなんだろうけどさ。
「おまえたちの子どもならワシは絶対に喜ぶ。Aがいいなら産んでほしい。もしどうしても育てられないと思ったらワシに任せなさい」
「……どうしてわたしのほしい言葉をくれるの?」
「育ての親とはそういうものだよ」
そうか。そうなのか。寿海さんの言葉はすとんとわたしの胸におさまった。
261人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
有希(プロフ) - 月兎さん» お久しぶりですー!この鬼神みある百鬼丸をカッコいいと…ありがとうございます。目線が変わっても感情がよく読み取れない、本当のところは何を考えてるんだろう、と気になってしまう、そんな風に描けたらと思うております。夢主の答え待っててくださいね。 (2019年6月26日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
月兎 - お久しぶりです。あの男性に連れていかれた夢主さん大丈夫でしょうか?連れさられた夢主さんを助け出す百鬼丸カッコいいです。明日の0時から最終回……目が離せません。夢主さんが現代に帰るのか帰らないのか、夢主さんの答えが気になります。更新頑張ってくださいね。 (2019年6月23日 17時) (レス) id: fdb5669a18 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - この小説のためにさん、お久しぶりです。コメント嬉しいです。感無量です。ありがとうございます。どうぞアニメが終わっても、この作品の結末までつきあってください。夢主と百鬼丸とどろろの行く末見届けてください。よければまたコメントしてくださいね。 (2019年6月21日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 星の桜さん、またコメントありがとうございます。どろろ最終回いよいよですね。何だか今からどきどきしてます。テスト関係でしばらく更新できないので、待っていただけると嬉しいです。私はタオルケットで挑む予定です。 (2019年6月21日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
この小説のために - 久々に見に来て、たくさん更新されてて、嬉しい限りです!やはりこの作品が私の中で一番です!どろろ最終回にあたり、この作品にも終わりがやってきてしまうのかと思うと、寂しいですが、夢主の行く末を見たいのもたしか……。心がごちゃごちゃだぜ!! (2019年6月18日 23時) (レス) id: 94dd1e54ca (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:有希 | 作成日時:2019年4月7日 12時