おまえが泣くと心臓がいたくなる ページ11
「わかった。わかりましたよ。わかりましたともさ。家族だと思ってたのは所詮、わたしと百鬼丸だけに過ぎなかったのね!!!」
――――――「A!!!!!!」
寿海さんがこんなに大きな声を出せたなんて知らなかった。見たことのない怖い顔で、わたしの肩を怒りに任せてぎゅっと握りしめてくる。骨からミシミシと聞こえそうだった。いやだ。こわい。いたい。にげたい。たすけて。
「やめて。やめてくれ」
それは誰よりも冷静な声だった。わたしたちのやり取りを聞いているだけだった百鬼丸が止めに入ってきた。わたしを寿海さんの手から開放してくれる。部屋の片隅でキュッと縮こまっていたどろろは、久しぶりに息ができたというように肩の力を抜いた。
「……なかないで、A」
「……だって……だって……」
「Aがないてると、おれの心の臓がいたくなる」
そうは言われても止まらないんだよ。わたしより泣きたいはずの百鬼丸がやけに冷静だった。なんだか情けなくなってくる。わたしは形ばかりの「ごめんなさい」を伝えて穴ぐらから出て行った。外は血なまぐさかったけど、すこしは息がしやすくなった。
*
しばらく外で拗ねていたけど帰る場所はひとつしかなくて、コソコソとほらあなを覗いた。どろろが寿海さんの話し声が聞こえた。聞き耳を立てるしかできない。
「改めて言わせてもらいたい。ありがとう、どろろ。今まで大変だったろう」
「まあ、そりゃね。ふたりとも化物以外への危機感ないし、抜けてるところばっかりだし、ひとに騙されやすいし、見てらんねえよ……どういう育て方したら、あんなふたりになるんだ?」
「それは、その、すまん」
「だけどおいら、感謝してるんだ。寿海さんにも。
Aの姉ちゃんと百鬼丸のアニキを育ててありがとな。ふたりに会わなかったらきっと盗みを続けて、人に、世界に、時代に、絶望したままだった……ふたりに会えたからって、世界はクソッタレなままだけど、でも捨てたもんじゃねえなって思えるようになったよ」
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有希(プロフ) - 月兎さん» お久しぶりですー!この鬼神みある百鬼丸をカッコいいと…ありがとうございます。目線が変わっても感情がよく読み取れない、本当のところは何を考えてるんだろう、と気になってしまう、そんな風に描けたらと思うております。夢主の答え待っててくださいね。 (2019年6月26日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
月兎 - お久しぶりです。あの男性に連れていかれた夢主さん大丈夫でしょうか?連れさられた夢主さんを助け出す百鬼丸カッコいいです。明日の0時から最終回……目が離せません。夢主さんが現代に帰るのか帰らないのか、夢主さんの答えが気になります。更新頑張ってくださいね。 (2019年6月23日 17時) (レス) id: fdb5669a18 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - この小説のためにさん、お久しぶりです。コメント嬉しいです。感無量です。ありがとうございます。どうぞアニメが終わっても、この作品の結末までつきあってください。夢主と百鬼丸とどろろの行く末見届けてください。よければまたコメントしてくださいね。 (2019年6月21日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 星の桜さん、またコメントありがとうございます。どろろ最終回いよいよですね。何だか今からどきどきしてます。テスト関係でしばらく更新できないので、待っていただけると嬉しいです。私はタオルケットで挑む予定です。 (2019年6月21日 22時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
この小説のために - 久々に見に来て、たくさん更新されてて、嬉しい限りです!やはりこの作品が私の中で一番です!どろろ最終回にあたり、この作品にも終わりがやってきてしまうのかと思うと、寂しいですが、夢主の行く末を見たいのもたしか……。心がごちゃごちゃだぜ!! (2019年6月18日 23時) (レス) id: 94dd1e54ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希 | 作成日時:2019年4月7日 12時