すべてはあなたのために ページ40
「Aきさま、一国の民よりもたった一人の命が大切だというのか?何百という犠牲のうえであの小僧ひとりが生きるべきだと言うのか?お前は醍醐の民の嘆きが聞こえぬと、そんなことが言えるのか?」
「そうです」
「……」
「世界を救う女なんて古いです。令和のヒロインは世界よりも自分の男を優先します。わたしは誰が何を言おうと百鬼丸の味方です。よってあなたは敵です」
醍醐景光はわたしに太刀をひとふり浴びせようとして失敗すると、クツクツと笑い出した。お前はなんと憎らしく、単純明快でわかりやすい女なのだろう。
「お義父さん、百鬼丸が欲しいです」
「お義父さんと呼ぶな。勝手にしろ。あれは私のものではない。くれてやる」
「それを聞けてよかったです。加減しないで、あなたと戦える!」
わたしとお義父さんは同時に駆け出した。ひさしく聞いていなかった刀がまじわる音に血が巡る気がする。ここは夢の中なんだから、あなたの首をとって葬っても許されるわよね?
「よもや女で、しかも脇差一つで、ここまで動ける者がいるとはな!我が側近に欲しいくらいだ!」
「お断りします!好きでもない相手に忠誠を誓うなんて、たえられませんからね!」
「まったくだ!」
刀が、きん、と音を立てて、離れた。
「ここまでの腕となると、並大抵の鍛練ではあるまい!何故だ?お前の強さの理由を、聞いてみたいものだな!」
「わたしは、わたしがここまで、刀を振れるのは……」
*
「……あれ」
目が覚めた。いつもどおり眠気覚ましに、百鬼丸が腕枕してくれている方の手を握ろうとする。で、百鬼丸がいないことと、私が寝ていたのは朝倉の陣中だとようやく気づく。起き上がって、逆立ちして、身体の調子を確認する。よしよし。五体満足。どろろが無事だといいんだけど。さあてどうしたもんかな。なんとはなしに空を見上げると、そう遠くもないところで、細い煙が上がっているのが見えた。再会できた喜びを示すためにチューしようとするけど、怒ったふたりは許してくれなかった。
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有希(プロフ) - わかります!どろろのキャラデザすごくいいですよね。ツボです。主に百鬼丸の顔が。好きだなんて…!嬉しいお言葉ありがとうございます。励みになります。続編移行するので、そっちも読んでいただけたら喜びまくります。コメント嬉しいです。 (2019年4月7日 11時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
翔(プロフ) - 最近、どろろにはまってすごい絵とか好きです。こちらの作品も好きになりました。百鬼丸の心に惚れた。は、かっこいいですね。更新待ってます。(o^∀^o) (2019年4月7日 9時) (携帯から) (レス) id: b9fae3d1e9 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - あわてて目がつくところは修正しましたが、まだ残っているかもしれません。と言うより、残っていると思います。できればどなたか、そっと教えてください。 (2019年4月2日 21時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 嬉しいコメントありがとうございます!励みになります。間違いに気がついて今悶えております。急いで編集します。またコメントくださると嬉しいです。お気づきの通り、夢主は百鬼丸のこととなるとちょっとヤバめな子です。これからもよろしくお願いします。 (2019年4月2日 21時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
Sinn - いつも楽しく見ています!夢主の百鬼丸愛がもうっ…!(笑) あと、ずっと気になってたのですが、義足技師の先生の漢字が玄海ではなく寿海です。ずっと気になってて…すみません。更新頑張ってください! (2019年4月2日 21時) (レス) id: de0e7e661c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希 | 作成日時:2019年3月30日 17時