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Despair and cooking ページ4

『今の自分には、幸せも、不幸もありません』
  太宰治 人間失格にて
 
 少女は、男に手を引かれ、何も言わず、ただ淡々と、ただ黙々と道を歩いていた。
 やがて、静寂を切り裂き、男は声を出す。
「そう言えば、名前、聞いてなかったよね。君、名前何ていうの?」
 少女は、男の方を見ずに、顔を伏せたままで、「雪です」と小さな声で呟くように答えると、被っていたパーカーのフードを一層深く被り、ちらりと男の方を見た。男は、「そっか」と少女の小さな言葉に返事をすると、「俺は、清丸。清丸、国秀」と自分の名前を名乗った。けれど、右側に居る少女には応答が無い。
 再び、謎の沈黙が流れたその時だった。今度は、少女は小さな声で男、もとい清丸に問いかけた。
「これから、どうするんですか。住処とか、寝床とか、ご飯とか」
 少女はそれから、もう一言何か言おうとしたが、清丸が、そんな少女の言葉を遮った。
「この辺りに、ホテルあるよね? 暫くは其処で暮らそう。其処なら、寝床も、住処も、ご飯も心配しなくて良くなるよね」
 清丸のその返事に「そうですか」と無表情に返事をすると、少女はふと顔を横に反らす。視線の先には、大きなビルと、其処の看板に刻まれた「ホテル world」の文字。
 少女は、慌てて清丸の肩を背伸びして叩くと、さっきより少し大きな声で「お兄さん、ホテル」と清丸に声を掛け、ホテルを指差した。清丸は、少女が指差すホテルを目で捉えると、「此処じゃないよ」と優しく、少女の頭を撫でながら言うと、「ほら、こっち」と少女の手を少し乱暴に引いた。
 ――なんで、このホテルじゃ駄目なんだろう。そんな疑問を抱きながら、少女は清丸に手を引かれ、路地裏へ入った。薄暗い。酒の匂いと、何かが焦げた様な不思議な匂いが少女の鼻に付く。
「おっ、お兄さん……何処に往くんですか」
 そう少女が軽く咽ながらそう言ったときだった。清丸が、足を止めた。勢いづいていた少女は思わず躓く。少女はなんとか体を起こし、其処の建物を見た。古びた、不気味な雰囲気のアパート。思わず少女の口から小さな声で「此処、大丈夫なのかな」という声が漏れる。
「あのお兄さん、此処、誰のお家なんですか……?」
 少女は不安そうに清丸の顔を覗き込みながら、そう問いかけた。その時だった。
「よぉ、清丸」
 そう、男の野太い声が、少女と清丸の後ろからした。

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設定タグ:藁の楯 , アルビノ主 , 夢小説   
作品ジャンル:タレント
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煉獄少女(プロフ) - 匿名さん» すいません外し忘れてました。お手数をおかけしました。 (2017年7月31日 22時) (レス) id: 4523b23060 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - オリジナルフラグ、外してください。違反の対象となります。 (2017年7月31日 20時) (レス) id: 657e948106 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪椿 | 作成日時:2017年7月23日 14時

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