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Contempt and incompatibility ページ11

「ああ、死ぬなんて、いやだ。あたしの手が、指先が、髪が、可哀そう。死ぬなんて、いやだ。いやだ。」
 ――太宰治 葉桜と魔笛にて

 彼女が望んだものは、あくまで、清丸との静かで、平和で、官能的な生活であった。
 ――どこかの誰かが言っていた気がする。『本当に欲しい物と、実際に手に入れるものは喰い違っている』と。そんなことを口の中で唱えながら、少女は清丸に手を引かれ、喧騒の街を歩んでいた。
 あの後、清丸が言ったのだ、「警察に出頭しよう」と。そうすれば、もう民間人に狙われることは無くなる、と。少女は、それに従った。お兄さんと離ればなれになるのは嫌だけれど、お兄さんが死んでしまうほうがもっと嫌だ。そう少女は思ったのだ。
 歩きながら、少女は考える。隣で自分の手を引く清丸は、一体全体、自分のことをどう思っているのだろうか。と。可愛い彼女? 都合の良い道具? 単なる同居人?
 一生懸命頭を回すも、少女の脳に答えは出ない。そもそも、人の考えなんて判るはずがない。そう少女が結論づけ、考えるのを止めようとした、その時だった。清丸が足を止めた。少女は転びそうになりながら清丸の視線の先を見る。其処には、大きなビルと、「福岡県県警」と書かれた大きな看板があった。
 少女は息を呑む。少女にとってこの建物は、死後の裁きを受ける建物よりも恐ろしく見えた。清丸と少女が警察署の敷地内に入った、その瞬間。一気に、二人の周りに人が集まってきた。集まってきた人々は、清丸と少女に様々な質問を投げかけてくる。
「何故傷だらけなのですか?」
「そちらの少女は夫婦殺人事件の容疑者の少女ですよね?」
「清丸サイトはご覧になりましたか?」
「答えて下さい」
 その人々の群れを掻き分けながら少女と清丸は進んだ。最後。建物の中に入る直前、少女は、その軍勢に謝罪した。「すいません」「答えたくありません」と。弱々しい声で、深く頭を下げながら。
 そしてその後で、少女は自分の行った行為の浅はかさに気づいた。彼らはきっと、というか絶対にマスコミだろう。彼らはきっと、私が謝罪したことを、ニュースで、新聞で、ラヂオで、ネットで、面白可笑しく紹介するのだろう。「謝るのは疚しいことがあるからだ」とか言って。

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設定タグ:藁の楯 , アルビノ主 , 夢小説   
作品ジャンル:タレント
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煉獄少女(プロフ) - 匿名さん» すいません外し忘れてました。お手数をおかけしました。 (2017年7月31日 22時) (レス) id: 4523b23060 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - オリジナルフラグ、外してください。違反の対象となります。 (2017年7月31日 20時) (レス) id: 657e948106 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪椿 | 作成日時:2017年7月23日 14時

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