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扉が、開いた。少女の父親と母親が帰ってきたようだ。
父親は、喪服を脱ごうと寝室へ向かった。そして、母親は少女を探して階段を登り、上に上った。刹那。父親の悲鳴が家の中に響く。驚いた母が下を見に行くと、其処には、血塗れの青年が居た。青年の足元には、喉元に包丁の刺さった父親が居た。母親は思わず悲鳴を挙げる。
そして、母親は、せめて我が子だけでも守ろうと階段を駆け上がり、少女の部屋へ飛び込もうとした。けれど、其の瞬間、彼女は膝から崩れ落ちた。彼女はゆっくりと振り返る。背中に刺さる包丁、笑う青年。
彼女は、愛しい我が娘の名前を繰り返し呼びながら、静かに息絶えた。
栗の花の匂いを感じ、少女は目を覚ます。
少女の目の前には、血塗れになった包丁を手に持ち、狂気をはらんだ笑顔で微笑み、少女の上で馬乗りになっている、さき程の男性が居た。それを見た瞬間、少女は察する。嗚呼、私は殺されてしまうのだろう。
そう少女が覚悟を決め、目を閉じたその時、少女の首に、冷たい、鉄の感触が伝わった。
驚いて少女は目を開く。慌てて首を見ると、其処には銀色に輝く首輪が在った。其のリードは、男の手にしっかりと握られている。
困惑する少女に、男はにやりと笑いかける。
「君、可愛いね」
男はそう言うと、少女の頬にそっと触れた。
「その白くて柔らかそうな肌とか、その雪みたいな髪とか、僕のことをじっと見るその赤い目も、全部さぁ」
少女の身体に軽い悪寒が走る。この男は、なにを言っているのだろうか。と。男は、「だからさ、君のこと」と少女に笑いかけると、少女の首輪に繋がるチェーンを引き、少女に顔をあげさせると、少女の耳に優しく囁いた。
――僕の物にするね。
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煉獄少女(プロフ) - 匿名さん» すいません外し忘れてました。お手数をおかけしました。 (2017年7月31日 22時) (レス) id: 4523b23060 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - オリジナルフラグ、外してください。違反の対象となります。 (2017年7月31日 20時) (レス) id: 657e948106 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪椿 | 作成日時:2017年7月23日 14時