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俺とやぶは高校入試だからって緊張することもなくその日を迎えて、とくに問題もなく終了した。

『早く高校行きてぇなぁ』

『まだ受かってもないのにな』

『あんなん落ちるやついるのかよ』

早く、早くあの人に、会いたい。
俺の頭の中はそればっかりだった。

『うわ最悪。手袋忘れた』

『取り戻るか?』

『1人で行ってくる。やぶ先帰ってて』

面倒臭いけど、この寒い中を手袋なしで帰るのも嫌だ。
来た道を探しながら戻る。

結局試験を受けていた教室まで戻ると、俺が使っていた机に誰かいる。
あぁ最悪。

『すみません、忘れ物しちゃって』

振り返ったその人の手に俺の手袋。
でもそんなの俺は見えていなかった。

だってその人は、あの人で。

『あ、』

『寒いから、ちゃんと付けるんだよ』

その人は俺の手を取って、手袋を付けてくれた。
暖かくて大きな手に、包まれるように握られる。

『綺麗な手だね』

『あ、う、あ…』

『4月に会えるの、楽しみにしてるね』

優しそうな笑顔で頭を撫でられて、もう俺はなんて言ったらいいのか分からない。

でも、この機会を逃したらこの人に会えないかもしれない。

そう思ったら身体が勝手に動いてくれた。

『あの!俺!伊野尾慧って言います!よろしければお名前をっ』

きょとんとした顔をしたその人は、またふふ、っと微笑んで『高木雄也』と教えてくれた。

たかき、ゆうや

格好良いだけじゃなくて優しくて笑顔が素敵な人だった。

『おっせーよ伊野尾…どした?』

『あの人、いた』

『は?』

『格好良かった』

『あぁ、あの人か』

俺の頭はあの人、ことたかきさん一色。
たかきさんは俺の運命の人だと、疑いもしなかった。







『あ、合格〜』

『っし、俺も』

貼り出された一覧にはしっかり俺とやぶの番号が書かれている。
なんの心配もしていなかったけれど、これでひと安心。

たかきさんに、会える。

『いのおくん』

『たかき、さん?』

ほら、会えた。

『用事のついでに見に来ちゃった。合格した?』

『はい!4月から、たかきさんと同じ学校です!』

『うん、頑張ったね』

また頭を撫でてくれて、俺の気分は最高潮だ。

合格した興奮の余韻だったのかな。

溢れ出るたかきさんへの想いを、俺は止められなかった。

『たかきさん、俺を、たかきさんの彼女にしてください』

目を丸くするたかきさんとやぶの顔だけ、なんだか鮮明に記憶に残っている。

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作者名:ney-ko | 作成日時:2018年1月22日 23時

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