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『薮くん、好きです』

隣のクラスのマドンナの言葉なんて今の俺の頭には一切入ってこない。

俺の頭を支配しているのは、恐怖に怯えた光の顔。

また、やってしまった。伊野尾に怒られる。

『悪い、俺好きなやついるから』

どんなに可愛くても、胸がでかくても、光より可愛いやつなんてどこにもいない。

明らかに風呂上がりな湿った髪と、バスローブと、上気した頬と、潤んだ瞳と。
あんな凶器を前にして俺が堪えられるはずがない。

伊野尾だってそれを分かってて光をこっちの部屋に寄越したんだ。

受け入れてもらえると思った俺が馬鹿だ。

キスくらい。いや、キスで留まれたかは分からないけれど。

舌入れたのがマズかったのか。

触れただけの時は、まだ良かった気がする。

今はない光の体温に、俺の手が空をかく。

謝って、許してもらえるだろうか。

『このバカやぶ!』

『いっ!てぇ…』

突然の後からの攻撃になんの反撃もできない。

『光、そっち戻ったか?』

『大ちゃんと寝てる』

『はぁ…良かった…』

『良くねぇよ、ばーか』

違う俺だって、あの女子が来なきゃすぐにでも光に土下座したかった。

『バカのダブルパンチ』

『んだよそれ』

『ひかるが泣いてんの、そっちじゃねぇの』

そっち、ってどっちだ。

『あんな女無視して、すぐにひかるを追わないからだろ。ばーか』

嘘だ。だってあんな怯えた顔されちゃ拒絶されたと思うだろ、普通。

『そりゃいきなりディープなんてされりゃ怖くもなるだろ』

『てめぇ、枕の下にゴム置いてったのバレてっからな』

あれぇ忘れてたぁ、なんてヘラヘラしてる伊野尾をぶっ飛ばしたい。

『だってやぶ、ひかるのことなんてお構いなしに盛りのついた犬みたいにしちゃいそうだからさ』

『俺をなんだと思ってんだよ』

ただ強く否定出来ないのは、イタイ。

あんな涙目な光に見つめられて、どうしたら自分の欲に抵抗できるんだ。教えてくれよ。

ずっとずーっと我慢してるのに。
光がそうじゃないことに俺自身も少しショックを受けているのも事実だ。

『好きな人としたくなるやぶの気持ちも分かるけどさぁ。ひかるにその気持ち、伝えたの?』

『ひかるに好き、って、ちゃんと言ったの?』

あぁ、俺は本物の馬鹿かもしれない。

高校三年生。やぶひか→←3



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作者名:ney-ko | 作成日時:2018年1月22日 23時

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