はんぶんこ (ページ29)

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『ひかるは薮のどこが好きなの？』

ガチャガチャと音を立てて分かりやすく動揺するひかるは、本気で俺たちが気付いていないと思ってるんだろうか。

『なっ、いのちゃ、薮、俺、なんで…』

『落ち着けよ。見てれば分かるって』

顔を真っ赤にして口をぱくぱく。面白い。

『好きなんじゃないの？』

『…好きとか、分かんねぇし…』

薮への想いに以前に、恋とはなんぞや、そっからか。

予想していた以上に奥手なひかるに、俺の好奇心がむくむくと膨らみ出す。

『彼氏とか彼女とか居なかったの？』

『いたことない…』

『好きな人は？』

『それもない…』

『じゃあ告白されたことは？』

『それは、あるけど…』

ご丁寧にお断りを申し上げたそう。

真面目ちゃんなんだな。ひかるは。

とりあえず付き合ってみる？みたいなノリは考えつきもしないのかもな。

俺と高木の、始まりみたいな。

『へぇ～じゃあキスもえっちもないの？』

『キッ…？！えっ…？！って、』

俺の想像を上回る反応をしてくれるからからかい甲斐があるよ、ほんと。

『ね、俺としてみる？きす』

『は、ぁ？！なんでいのちゃんと？嫌だよ』

『むぅー俺とじゃ嫌なの？』

『そういう問題じゃない』

ちょっと冗談で言ってみただけなのにマジレスするんだから。飽きないなぁ、ほんと。

俺のことを綺麗だ可愛いだひかるは褒めてくれるけれど、俺にとってはひかるやだいちゃんの方がよっぽど可愛い。

ひかるのファンが多くて薮が手を焼くくらいには、ひかるだってモテてるんだぞ。
本人に言ったところで信じないから無駄だろうけど。

いつまでも見てるだけじゃ大切なものは手に入らない。

ひかるが行動を起こすなんて無理な話だから、俺は薮を焚き付けることに決めている。

ひかるが寝たのを確認してから、そっと首筋に口付ける。

『ん…』

ちう、と吸いつけば薄く赤い痕がついた。

きっと薮はコレに気付いてくれる。

にしてもひかる、刺激に対する反応がえろいな。