はんぶんこ (ページ17)

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伝え忘れた。やぶひかページ17

初めて光を抱いたのは、酒の力を借りて、だった。

まぁ光は酔っていなかったのに俺はよくやったと思う。光もキレなかったし。

でも光が抵抗しない自信もあったんだ。

光が無自覚ながらに、俺のことをそういう目で見ていたのは知っているから。

それに気付いたのはもういつか思い出せないくらい、昔。

その時既に俺は光のことだけが頭を占めていたし、俺の気持ちはみんなが知っていた。光以外の。

だからって焦る気持ちは微塵もなくて、光の隣に居るのは自分だけなのだと確信を持っていた。

ただ段々と綺麗になっていく光のことが、想定外で。

綺麗なのは分かっていたしモテることも承知だった。
でもそれだけじゃない。

なんかこう、色気、みたいなものがだだ漏れするようになったというか。とにかくえろい。
無自覚な上目遣いと元々の舌っ足らずな喋り方。華奢な肩と細い腰は触れると折れてしまいそう。

そんな光を、そんな目で見るよろしくない輩がいるらしいと。教えてくれたのは伊野尾だった。

ってことはお前もそういう目で見てんだなと徹夜で議論を交わしたのはまた別の話だ。

酒の力を借りなきゃ光に指一本触れられなかった俺が一番、疚しい目で見ていたんだろう。

そのハジメテからは、光が良さそうだなって日にだけ声を掛けて、俺のベッドへ雪崩込む。

今日は珍しく、光の物欲しそうな視線がずっとあった。

ただでさえ光の放つフェロモンのようなものに俺はグラグラに理性が揺れて、他の奴らだって意識せざるを得ないから光を守ることに精一杯なのに。

あんな蕩けるような顔を外で見せるなんて、反則だ。

『ァん、やぶぅ、』

『ひかる、気持ちいい？』

俺の問いかけにこくこくと頷く素直な光。

外では俺の前で甘えたり泣いたりしないのに、行為が始まった途端こんなに素直で可愛くなるんだ、光は。

細い身体が撓らせて嬌声をあげる光は、外で見せたものとは比べ物にならないくらいにうっとりした顔を見てくれる。

行為が終わって裸で抱き合っているとぐすりと鼻を啜る音がした。

『光？どうした？』

『やぶぅ…俺、へん？』

『なにが？』

『恋人、でもないのに、こんなことして…』

光から投げられた質問に、ぴしりと固まった。

あれ俺ってそもそもなんで光とこんなことになっただっけ。酔った勢いとか誰でもいいとか思われてるってこと？光の気持ちは？

『光、俺の気持ち、聞いて』

すっかり、忘れていた。