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窒息。やぶひか ページ16

気付けば指が触れ合っていた。

絡まれる、というよりもそろりと結ばれた指はあまりにも自然で。

逆になんで今まで結ばれていなかったのか不思議なくらいだった。

薮の口が動いたのが分かった。

ひかる、いくよ、と。

2人の世界にどっぷりと浸かっていた俺はハッとして、急いで薮の背中を追い掛ける。

みんな居るのに指を触れ合わせていたという事実に、顔を赤くする。

なんだか最近、こういったことが増えた気がする。
いや、気のせいじゃない。

今だって、ソファに並んで座っているだけなのに俺の右肩には薮の左肩が当たっている。

時々頬に触れる薮の髪の毛がくすぐったい。

目線はスマホにあるものの、意識は全て隣の薮に集中していた。

そして同じく、薮の意識も俺に向いている。

これは気配とかそんな曖昧なものではなく、確信。

とくりとくりと心臓が脈打つたびに心に絡まる蔦は、薮が居ないとダメになるよう俺に訴える。

離れちゃダメだ。傍にいて。もっと、もっと近くに。

俺の心の声が聞こえたんだろうか。

そんなはずはないと分かっているのに、俺にもたれかかる薮の体重は重くなっていく。

そっと抱かれた肩が引き寄せられて、恥ずかしいのと行き場のない想いがぎゅっと目を瞑らせる。

この、胸の奥深くでどろどろと蓄積されていく想いは、なんだろう。

『ひかる、帰るか』

『おう』

薮の手をとって歩き出すと、その手は離されないままになって。ゆっくりと薮に近付くことができそうだ。

『今日、泊まってくだろ?』

『いいの?』

『とーぜん』

車に乗って目的地が決まれば、薮の運転で軽快に走り出す。

冬だから、と至る所にイルミネーションがされていて、それを眺めていたらなんだか目と鼻の奥がつんとした。

右手はずっと、薮の左手に包まれたまま。

玄関のドアが閉まってすぐ、靴を脱ぐ間もなく薮に壁に押し付けられる。

『んぅ、っふ、ンん』

『っ…は、』

わけが分からなくなったところで唇が離れたから、薮を見上げると切なそうな瞳と目が合った。

『お前、見過ぎ…』

『へ?』

『誘われてんのかと思う。そんな目で見られたら』

薮が何言ってるかいまいち分からないし、自分がどんな目をしてるかなんてもっと分からない。

『とにかく、今日もベッド直行。飯はその後』

『え?んっや、ぁ…』

しっとりと濡れた薮の舌が身体を這えば、もう何も考えられなかった。

伝え忘れた。やぶひか→←無邪気。けとひか



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作者名:ney-ko | 作成日時:2018年1月22日 23時

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