無邪気。けとひか ページ15
『圭人、ちょっとこい』
『え、なに、光くん』
我慢出来なくなって圭人の腕を引いて2人きりになれる場所へ。
圭人が俺のことを好きだと気付いたのはもう思い出せないくらい昔だ。
可愛い弟のような圭人を、ずっと可愛がろうと思っていた。
でも俺はそんなに器用な人間じゃないから、多くのものを平等に大切にすることは出来なくて。
圭人が大人になるのを待とうと思った。
ところが俺が思っていたよりも圭人が大人になるのは早かった。
いつの間にか身長も追いつかれて、体格なんか優に俺を追い越して。
圭人のさり気ない優しさに俺は何度も救われてきた。
その反面、大人っぽい仕草や表情に胸が高鳴ることが多くなって。
お互いに上手くコミュニケーションが取れないまま自然に距離が開いてしまった。
『光くん?』
訳が分からないといった顔で俺を見つめる圭人の手を、きゅっと握り直す。
俺よりもぶ厚くて、骨張った男らしい手。
少し前までは、細くても俺の方がもちろんでかくて、俺が圭人を守っていくんだって思ってた。
はずなのに。
『なにかあった?』
今じゃ俺がこんなふうに包まれて、片手で頭を抱かれるなんて。なんでこんなことになってるんだ。
ぽつり、と、床に水滴が垂れたのは、信じられないけれど俺の涙だった。
こんな女々しくちゃ、圭人に呆れられるかもしれない。
圭人はきっと、強くて、頼れる俺が好きなはず。
だってずっとそうして来たんだから。
『光くん、顔あげて?』
『やっ、だ…見るなぁ!』
一瞬で圭人に両手首を掴まれて、逃げた分だけ壁に近付いた背中がとん、とぶつかる。
ずるずるとへたり込んだ俺の前に圭人も腰をおろして、呆気なく顔を覗き込まれた。
自分でもどうしてこんなに泣けるのか分からない。
少し圭人に触れられただけで、タガが外れるなんて。聞いてない。
『光くん今、どんな顔してるか知ってる?』
『は…?』
目を向けると思っていた以上に圭人の顔が近くにあって、固まってしまった。
その一瞬の隙を見逃さなかった圭人は、俺の唇に噛み付いてきた。
本当に、食べられるんじゃないかと思った。
舐めたり吸ったり噛んだり、圭人は俺の口の中を好き勝手に暴れた。
『ずっと、こうしたかった』
息のかかる距離でそう言ったと思ったら、また唇が重なって。
俺が自分の想いを口にするのは、まだずっと後になりそうだと思った。
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作者名:ney-ko | 作成日時:2018年1月22日 23時