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年上彼女 ページ45

憧れの薮先輩がイケメン仲間たちとバンドをすると言って盛り上がったのが2ヶ月前。
それを手伝いたくてサークルみんなで立ち上がった。
私は薮先輩に近づきたくて必死。
もちろん彼女がいるのも知っているし、薮先輩がぞっこんなのも知っている。
だって待ち受けが見たこともないほどの笑顔で彼女の肩を抱いているツーショット。

それを当たり前のように見ている伊野尾先輩たちの口ぶりから、その彼女がみんなに愛されているのが分かる。

どうして私は、薮先輩が選んだ彼女よりも自分の方が勝っていると思い込んでいたんだろう。

ステージ上の薮先輩を見つめる彼女の目は、完全に恋する乙女の目だった。

この彼女と入れ替わりで入学した私は当然この人のことを何も知らない。
でも先輩たちは確かに言う。

『すっごく面白くて元気な人』
『綺麗なのに気さくで男より女にモテる人』
『結構遊んでるのに純粋で反応が可愛い』
『しっかりしてそうに見えて実はバカ』
『運動部のピンチヒッター』

彼女のことは知らない人の方が珍しくて、教授なんかも彼女のコミュニケーションスキルの高さを評価している。

『彼女の良いところは良くも悪くも他人と真正面からぶつかれるところ』
『逃げるという行為が自分にとってプラスにならないことを知っている』
『自分の意見をはっきりと口に出来る日本人は多くない』
『相手の良い部分を吸収できるほど脳が柔軟』

目は口ほどに物を言う、とはよく言ったもので。
他人から聞いた彼女の評価だけだと彼女は非の打ち所がないような印象に思えた。

だけど今目の前で薮先輩を見て涙を流すこの人の美しさってなんだろう。

正直なところ、顔は普通だと思った。
みんなが口を揃えて綺麗だと言うほど綺麗ではない。決して不細工ではないけれど。

スタイルは確かにいい。ショートパンツからスラリと伸びる見たことないほどの脚線美。
大きい胸とキュッとしまったウエスト。

彼女の人目を惹く魅力ってなんだろう。
分からない。分からないのに、目が離せない。
これはただの嫉妬?

「薮くんが格好良すぎて泣ける」

それで本当に涙は流れるものなの?

バンド演奏が終わって薮先輩は彼女にべったりだった。
でもその時の彼女は、さっきまで泣いていたとは思えない表情で。

「みんなかっこよかった!すごかったね!」

嘘。あなた薮先輩しか見てなかったじゃない。
あんなに泣いていたのに。その感動は伝えないの?

私は見てはいけないものを見てしまったようだ。

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作成日時:2017年5月8日 9時

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