年上彼女 ページ35
「薮くんいっつも女の子に話しかけられてたよね」
『深雪さんもいっつも男と喋ってたよ』
「飲み会とかも誘われてたし」
『俺は1回も行ったことない。俺は』
「私だって下心ありそうな人とは行ってない」
『下心ない男なんていませーん』
「じゃあ薮くんが大学の頃に行ってたのは下心ありだったんだね」
『大学の時の飲み会は違うじゃん』
「女の子に絡まれてたって知ってるもん」
『相手にしてなかったって言うのも知ってるでしょ』
「私も誰も相手にしてないよー」
『でも深雪さんはみんなに優しいから勘違いされてるよ』
「嘘だ私全然優しくないよ」
『誰にでも同じ態度なのがムカつく』
「ムカつく？！」
『俺に対しても、光とか山田とか、上司にも後輩にも。みんなに同じ。特別感ゼロ』
「それは仕事中だけでしょ」
『自分にも同じ態度で接してもらえるのが嬉しい奴もいるんだよ』
「なにそれ全然分かんない」
『そういう鈍感なとこもムカつく』
「またムカつくって！あ、待てあの犬可愛い」
月に1回くらい、俺と深雪さんは散歩に行く。目的もなくブラブラとただのんびり歩くだけ。持ち物は携帯と、深雪さんのポケットに千円札一枚。携帯は写真用。
深雪さんはこの時間を究極の贅沢という。
「はぁ〜幸せ〜」
見ず知らずの人の家の犬を撫で回しながら深雪さんはため息を漏らす。
犬の方がなんだこいつ、みたいな顔に見える。
俺はそんなツーショットを携帯に収める。
いくつになっても深雪さんは可愛い。
「コンビニ寄ってこ〜」
『コーヒー？』
「おでん！」
千円分たっぷりおでんを手に入れた深雪さんはご機嫌。どうやらこれが目的だったらしい。
「おでんが冷める！早く！」
早足になる深雪さんに合わせて俺も早足になる。
家に着く頃には駆け足に近い状態になっていて、息が上がっていた。
「も、薮くん、走っちゃダメ」
『いや、先に走ったの深雪さんだし』
結局おでんは俺が持って、深雪さんはそれを追い掛ける形で走っていた。
冷静に考えるとバカバカしすぎて笑える。
俺が耐えきれずに吹き出すと深雪さんも笑っていた。
「あー楽しかったー」
いい大人が何してるんだろうって思うけど、深雪さんが隣で笑っていてくれるからもう何でもいい。
今度は幸せすぎて笑える。
「薮くん何笑ってんの？」
『ん？幸せすぎて』
こうやって正直に答えちゃう俺もどうなんだって思うけど、深雪さんはバカにしないから。
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作成日時：2017年5月8日 9時
