年上彼女 ページ32
深雪さんとペアで仕事を始めて1ヶ月、家とは全くの別人のように俺に接する深雪さんに戸惑いながらも、俺はそれなりに充実していた。
ただ一つ、不満があるとすれば深雪さんがみんなと仲が良すぎるところだろうか。
『深雪、この前の資料コピーってある?』
「昨日データ送ったじゃん」
『あれ混ざってたから間違えて消した』
「はぁ?バカじゃないの。件名までつけたのに」
『もう1回送って〜』
「触んな」
ほらこれ、ただの同期なのは分かるしもう癖みたいなもんだろうけど、なぜいちいち深雪さんに触る。肩だろうが頭だろうがなぜ撫でる。そして深雪さんもスルーするけどもっと拒否してほしい。
俺の目の前で毎日、毎回そんなことされていて、俺は見ていて気分のいいものじゃない。深雪さんは一切それに関して触れることはない。
「薮くん、聞いてる?」
薮『あ、はい、すみません』
ちょっとでも俺が集中してないとこうして声をかけてくれる。それは俺だからなのか、それとも仕事中は誰にでもこうなのかは分からないけれど、気にかけてもらえるのは嬉しい。
真剣な顔でパソコンに向かっているあたり、仕事モードなのは当たり前なんだけど。
少しは俺のこと、意識してくれないかなぁ。
俺ばっかりドキドキして、ばかみたいだ。
今朝も家で見た、服を選んでいるところも、化粧しているところも、髪をまとめているところも。行ってきますのキスもした。
使っているシャンプーもボディソープも、履いている靴も、売っている店も全部知ってる。
それなのにどうして、会社で見るだけで変な気持ちになるんだろう。
仕事を家でやるしこともあるし、真剣な横顔だって初めて見るわけじゃないのに。
俺は会社の先輩に片想いしているような気持ちになる。好きなのに伝えられない、近くに居るのに触れられない、このもどかしい気持ちはなんだろう。
でもやっぱり独占欲は消えてくれなくて、ほかの男が深雪さんを見る度に、話しかける度に、この人は俺のだ、って叫びたくなる。
「薮くん、手止まってる。疲れた?」
『あ、いや、すみません』
「休んできてもいいよ。そんなに時間はあげられないけど」
俺は悶々とした気持ちを抱えながらも、集中出来ないのは事実だから一旦デスクを離れる。
フロアを出ると名前も知らない女子社員に話し掛けられる。
深雪さんもこんな風に話しかけてくれたらな、と適当な返事をしながら深雪さんのことだけを考えていた。
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作成日時:2017年5月8日 9時