年上彼女3 (ページ25)

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年上彼女ページ25

『色目？』

「薮くんがカッコよく見えるのは当たり前。だって好きな人なんだから」

何でもないことのように言うけど、やばい俺めちゃくちゃ嬉しい。

「薮くんも新人の頃凄かったんだから。長身、イケメン、頭脳明晰、優しい笑顔。私すっごく自慢したかったの。私の彼氏、って背中に貼ってやろうと思ったことあるし。ペアになった時もガッツポーズしたし、家でも会社でも一緒で嬉しくて。誰にも言えなかった間は秘密でドキドキしてたし、後輩っぽい薮くんに胸キュンとかしてた。あとは...」

『ちょっ、もういいからっ』

今まで深雪さんが俺のことに関してこんなに話したことがあっただろうか。おそらく懐かしいのもあって深雪さんは喋り続けてるけど、俺は恥ずかしくて聞いていられなかった。

「なに照れてんの」

『照れるよっ』

深雪さんの口から出てくるのは聞いたこともない話で、俺が想像もしていなかった深雪さんの気持ち。

「ずっと言いたくても言えなかったの、恥ずかしくて。私年上なのにバカみたいでしょ。しかももう30過ぎたのに。でも今も仕事中の薮くん見てカッコイイなって思うし、他の女の子が薮くんの話してるの聞くとイライラする。お似合いだねとか言われるとニヤニヤしちゃうし」

『なに、どうした、今日』

普段なら言わないようなことを話す深雪さんはとても饒舌で、今まで我慢していたのが伝わってくる。たぶん素直に大人しく聞いてあげたら良いんだろうけど、本気で恥ずかしくてどうしても言葉を遮ってしまう。

「薮くんに今まで伝えられなかった分。いっぱい話したいことあるの。私がどれだけ薮くんのこと好きか教えてあげる。薮くんが引くくらい」

この8年、俺は大学生から社会人になって係長になった。深雪さんも社会人になって係長になって、2人でひたすら仕事してきたように思う。
どんな時も2人で乗り越えてきて、たくさん話もしてきた。一緒に泣いて、笑って、怒って、もうお互いの知らないことなんてないと思っていた。

一番近くにいて、一番よく見ていたはずなのに、深雪さんの知らない顔はまだいっぱいあって。一番理解してなきゃいけないことを、俺は見逃し続けてきた。

『全部知りたい。深雪さんのこと』

「重いよ、私。こんな三十路女嫌になるよ？」

俺のあげた指輪を話している最中もずっと触っているような愛しい人、嫌になるわけない。
こんなに俺のこと好きでいてくれる人、俺が嫌になるはずないのに。