年上彼女 ページ24
「薮くん、肩、ごめんね」
『え?あぁ、大丈夫。そんな痛くないよ』
昨日の行為で深雪さんに付けられた肩の傷は大して深くもないし、痛くない。すぐに消えそうだ。深雪さんもそんなに気にすることないのに。
『なんかいいよね。深雪さんの、って感じで』
「バカ」
『さすがに叩いたら痛い!』
冬だから人に見られることはまずないけど、わざと深雪さんに見せて照れる深雪さんを鑑賞できる。それを思うとシてる最中に引っ掻かれる痛みなんてなんでもない、とまた変態みたいなことを考える。
「ニヤニヤしてる変態薮くんにはコーヒーはなしです」
『いいよ、深雪さんのもらうから』
「やらねーし」
『もらうし』
夜型だった俺は深雪さんと付き合うようになって見事生活リズムが正された。
深雪さんは本当にタフで、仕事なり飲み会なりで徹夜になっても必ず次の朝にリセットされる。それを決して俺には強要しなかったけれど、なんとなく見習っていたら深雪さんの徹夜も減って、俺も朝に強くなっていた。
コーヒーを飲みながら煙草を吸う時間が深雪さんにとっては至福の時。俺が未成年だった時は俺の前で煙草を吸おうとしなかった。
そんな真面目な深雪さんにまた惚れ直して、俺は深雪さんを誇らしく思っていた。
こんな素敵な人が俺の彼女なんだと、大声で叫びたかった。たぶん光たちの前では叫んでた。
「男の人はいいよね、煙草吸ってたらカッコイイとさえ思われるんだから」
深雪さんはどこを目指してるんだ、と思うことがある。どうやら昔から、深雪さんはカッコイイ大人になりたかったんだと思う。
『山田あたりは、深雪さんの煙草吸う姿に憧れて煙草吸い始めたんだと思うけどな』
「え、やだ、山田くんったら」
『深雪さんのその山田にだけ照れるのってなんなの』
深雪さんは初めて山田に会った時から、山田の言葉や行動に照れて頬を染めることがある。
俺でさえ深雪さんを照れさせるのに苦労してるのに。光や伊野尾なんてたぶん照れさせたことないぞ。
「山田くんは別格だよ。何してても様になるし、ちょっとおバカなところも立派な武器というか」
深雪さんの言いたい事は分かる。山田は確かにカッコイイし仕事も出来る。でも山田ばかり褒められると俺もさすがに凹むというか。
『ずいぶん山田をご贔屓ですね、係長さん』
嫌味っぽく言うと深雪さんは分かってないなぁ、と呟いた。
「薮くんには色目フィルターがかかるでしょ」
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作成日時:2017年5月8日 9時