年上彼女 ページ23
「なんで今日、あんなしつこかったの」
『しつこいって言うな。じっくりって言え』
「あんま違わない」
しつこいって結構傷付くけど。しつこいんじゃない、じっくりゆっくり感じたかったんだ。
そう言っても深雪さんは理解出来ていなさそうだった。
「骨抜きって、こーゆーことだよね」
『そんなに良かった？』
からかい半分で聞いたつもりだったのに「かなり」なんて返されたら俺またその気になるけど。でも深雪さんは一切その気がないようで、伸ばした手は深雪さんの手に捕まった。
「愛されてるなぁって感じた」
ニコッと笑う顔は純新無垢な少女のよう。
そんな顔されたらもう手は出せない。だって本当に嬉しそうに、幸せそうに、俺の手をきゅっと握っている。
『愛してるからね』
「うん、知ってる」
目を瞑っているから、きっともう眠いんだと思う。さすがに冬に裸のまま寝かせられないからパジャマを着せる。深雪さんの大好きなフワフワモコモコパジャマ。
「やぶくんも、寝る？」
『うん、寝る』
俺も同じフワフワモコモコパジャマを着て、深雪さんをぎゅうと抱き締める。
『そのまま寝ちゃってもいいから、聞いて』
「ん...」
まだ言わなきゃいけないことが残ってる。これだけ伝えられたら、俺も安眠できそうだ。
『会社であんなことしてごめん。深雪さんの方が傷付いて不安だったのに、俺があんなことしちゃいけなかった。本当に反省してる。もう二度とあんなことしない。ごめん』
深雪さんが家に帰ってこないから謝る機会をずっと失っていた。メールや電話なんかで済ませていいことじゃなかったから、どうしてもちゃんと会って謝りたかった。
俺は傷付いた深雪さんを更に傷付けたんだ。
「もういいよ。私も家出なんかしてごめんね」
深雪さんがもしあの日、俺と一緒に家に帰っていたら、きっと俺は深雪さんを朝まで離さなかったと思う。深雪さんの話も聞かずにめちゃくちゃに抱いて、仕事も行かせないで家に閉じ込めたかもしれない。
自分で自分が保てなくなるほどあの時は冷静じゃなかった。深雪さんが居なかったから、俺は1人で考える時間が出来たんだ。
きっと深雪さんもそれを分かっていたから帰ってこなかったんだと思う。
「もう仲直り。もうこの話は終わり。おやすみ」
もう解決したんだ。深雪さんは帰ってきたし、俺も謝った。
この人が傍に居てくれるだけでこんなにも幸せでよく眠れるんだと、俺は身をもって思い知った。
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作成日時：2017年5月8日 9時
