年上彼女 ページ20
「捨てない。何があっても、私から離れるなんて有り得ないよ。薮くんはそんな心配しないで」
『深雪さんモテるんだよ。もっと自覚持って』
「浮気できるほど器用じゃないから。私ずっと薮くんしか見てないよ」
今まで深雪さんがモテるのを心配したことはあっても、浮気の心配はしたことなかった。それは深雪さんが俺のことを想ってくれてるのを行動で示してくれてたからなんだ。
「だからお願い、私のこと捨てないって、約束して？」
それは、今まで聞いてきた深雪さんのお願いで一番可愛いものだった。
あぁもうほんとに、いつも思うけど、どこまで好きにさせたら気が済むんだよ。
『深雪さんも俺のこと捨てないって約束してくれる？』
「もちろん」
『良かった。じゃあこれは深雪さんが俺のモノっていう証ね』
「こ、れ...」
深雪さんの左手の薬指にはめたのはピンクゴールドの細い指輪。深雪さんは呆気に取られている。驚いてくれてるけど、これにそんなに深い意味はない。
『これはただのプレゼント。俺の自己満。情けないけど、ちゃんとしたのはまだ渡せないから。これしてくれてるだけで俺安心できるから、ずっとつけてて欲しい』
「可愛い。ありがとう」
深雪さんに指輪をプレゼントしたのは初めてだった。照れ臭いのもあったし、指輪だけは特別な物にしたかったから。
それに深雪さんは邪魔だからとアクセサリー類を付けない人だ。失くすのも嫌らしい。
本物の婚約指輪は、深雪さんが結婚したくなったら渡せばいい。
「でもこれ、いつ買ったの？」
『内緒。でもほんとは、ずーっと渡すタイミング狙ってた』
「ずっと？」
『そう、ずっと。やっと渡せた』
雰囲気なんて作れないし、渡すタイミングをずっと伺ってた。喜んで受け取ってもらえる自信もなかった。
「嬉しい。大事にするね」
深雪さんはゴキゲンで、ずっと指輪を眺めてる。こんなに喜んでもらえるならウジウジしてないでさっさと渡せば良かった。
でも今渡したから意味があるものに出来たんだ。
「サイズぴったり。自分でも知らないのに」
深雪さんは自分のことに一切無頓着だ。でも俺が全部把握してればそれでいい。
『もう風呂入ろ。いろいろ限界』
「いろいろ？」
『いろいろ』
意味が分かってるのかいないのか、深雪さんはお風呂〜と言いながらお湯を貯めに行った。
身体を重ねることでしか伝わらない気持ちもある、なんてただの言い訳だけれど。
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作成日時：2017年5月8日 9時
