年上彼女3 (ページ11)

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年上彼女ページ11

「明日帰ろっかな」

『うん、早く帰れ』

「そんな事言うと居座るぞ」

明日で金曜日。毎日仕事だったから考えることが出来たかどうかは知らないけれど、深雪は随分とスッキリとした顔をしていた。自分の家にいるよりは落ち着けただろう。
私も深雪と2人で一緒に居られたのは学生以来だったからなんだかんだ楽しかった。
話したいこともたくさん話せたし。

ちなみに薮くんからは毎日メールが来てた。
深雪を心配する内容はもちろん、例のクズ男のこと。でも私の口からそれが昔の不倫相手なんて言う訳にはいかないから黙っていた。勘のいい薮くんのことだから気付いてるとは思うけど。

深雪が毎日元気で帰ってきたあたり、会社では何もされていないようだ。おそらく会ってもいない。だからこそ明日は怖い。あいつは自分の都合の良い時にしか何もしない、そういう男だ。

深雪がもっと狡かったら、もっと自分勝手だったら、あの男もこんなに執着しなかったかもしれない。でもそんな仮定の話は考えても仕方がない。
そんな深雪だから、薮くんがいま居てくれるんだと私も思うから。

かなり癪だけど、私は薮くんに頼るしかない。
深雪には薮くんしか居ないんだと、他でもない深雪の親友の私が言うんだから。

『なにかあったらすぐ薮くんに頼るのよ。自分がアホだと思ってるなら尚更』

「分かってるよ。薮くんがいてくれなきゃ、私なんにも出来ないんだから」

それを薮くんの前でも言ってあげたらいいのに。
熱に浮かされた状態で言わされた言葉なんかは、なんの信憑性もない。それは薮くんだって分かっているはず。だからこそ薮くんもそんな時にしか深雪に本音を言えない。

『薮くんだって怖いのよ。あんただけじゃないんだから』

「ん、分かってる、てゆーか離れてみてやっと気付いた。薮くん、帰ってこいって言わないの。私すぐ言われると思った。強制送還」

深雪に拒否されるのが怖くて強要できなかったに違いない。帰ってこいと言われれば深雪は帰ったかもしれないけど、その後どうなるか分からない。
きっと今だって、深雪になんて言えばいいのか考えてる。薮くんが何を言っても、おそらく深雪は拒否しないから。

でもいつまでもそれじゃダメなんだ。
深雪が傷付いた時に自分から言えて、自分で答えを出せるようにならなきゃ、薮くんは深雪に甘えたままになってしまう。