年上彼女 ページ35
『薮くんこれチョコレート!あげる!』
『薮くんこれもらって?』
毎年の恒例行事はただ俺たちを疲れさせるものだった。
薮は相変わらずモテていて、今年は彼女もいないせいかはたまた大学のせいなのか、容赦なくみんな近寄ってくる。
薮は徹底的に断っている。まぁあれだけの数を受け取ったら帰るのに一苦労だからな。
高『光くんチョコもらった?』
光『まぁ何個かは』
伊『早く帰ろぉよ〜』
チョコを渡したい気持ちはわかるけど、授業が終わってから結構な時間が経っていて。もう俺たちは帰りたい。薮も帰りたいはずだ。
そもそも薮の機嫌はあまり良くない。
今日に限って先輩に一度も会えていないからだ。
先輩にチョコはいらない、と見栄を張ったらしいけど。なんでそんなアホなんだ。
「あ、薮くんだ」
『あんたたちは本当おモテになるようで』
たまたま大学に用事があって来ていたらしい先輩たちは、たぶん俺よりチョコをもらってる。
光『先輩、それって...』
「あ、もらっちゃったー!いいよねぇ、女の子は。可愛いし癒される。手作りのブラウニーとかあるの!すごくない?」
明らかに手作りっぽいお菓子をいっぱい持って先輩はすごく嬉しそうだ。
『深雪はチョコをお酒のツマミにするの。これだけあればだいぶツマミ代浮くからね』
高『まさかこれのために来たんじゃ...』
「まさか。貰えるなんて思ってないよ」
伊『先輩、ほんと変わってる』
「あはは〜よく言われる〜」
完全に色気より食い気な先輩は、本気で薮にあげる気はなさそうだ。
薮『先輩!』
「ん?」
薮『俺とデートしましょう!今日!』
「デート?」
薮『俺がチョコレートいっぱい買ってあげます!』
餌付けかよ。薮はちょっと方向性を間違えている。先輩とデートしたくて必死かよ。
『残念、薮くん。深雪は別にチョコが好きなわけじゃないのよ』
「私お酒と一緒に食べるチョコが好きなの」
ほら、先輩のこの斜め上を行く感じ。この掴みどころのなさがたぶん薮の心を掴んで離さないんだよな。
先輩には珍しく伊野尾と高木も懐いてる。俺も人のこと言えないけど。
「あ、でも薮くんにチョコ用意してないからチョコレートケーキ食べに行こうか」
薮『行く!行きます!』
先輩はこの一年近くで薮の扱いに慣れてきているようだ。薮に尻尾が見える。
『幸せそうね〜見てあの顔、イケメン台無し』
早くくっつけ。うっとうしい。
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作成日時:2017年4月24日 8時