年上彼女 ページ27
「完全にはぐれちゃったね」
薮『そっすね』
最初から先輩が暴走したおかげで俺はほとんど先輩と2人きり。
あいつらを誘った意味ってあったんだろうか。
先輩もみんなで行きたい、と言った割に「ま、いっか〜」と笑っている。
薮『楽しそうですね』
「え、楽しくない?」
薮『いえ、そういう意味じゃなくて。俺と2人だけになっちゃったんで』
「あ〜そだね。みんなで来た意味あんまりなかったね」
先輩はそんなに深く考えていなさそうだ。やっぱり意識してるのは俺だけか、と思うと少し寂しくなる。
「私、彼氏とお祭りって来たことないの」
薮『え?』
「行くって約束してたのに喧嘩してダメになったり、人混み嫌だって断られたり。男の人はお祭りって嫌いだと思ってた」
先輩は過去にどんな男と付き合ってきたんだろう。聞けば聞くほど可哀想になる。
「私自分勝手だから行きたいとこ走っちゃうし、いっぱい食べるし、私と居ても楽しくないのかなって、」
薮『楽しい!俺、すごく楽しいです』
さっきまでと違って、あまりに悲しそうな顔をするから。俺は思わず先輩の手を握った。
ねぇ、俺ならそんな顔させない。
お祭りなんていくらでも一緒に行ってあげる。
先輩が走ったら俺もついてく。
いっぱい食べたいなら俺も食べる。
「良かった。つまんなかったら言ってね」
だから、そんな悲しそうな顔で笑わないでよ。
薮『花火、始まるから行きましょ』
「薮くん、手...」
薮『走ってっちゃって迷子になったら困るから』
俺がそう言うと、先輩ははい、と素直に返事をして、ぎこちなく手を握り返してくれた。
何この可愛い生き物。
この時初めて、俺の中のS心がわずかに顔を出した。
この人もしかしてイジメたら素直になるタイプかもしれない。
そんなことしないけど。まだ。
手を握ったあたりから、明らかに先輩の口数が減った。
体調が悪いのかと思ったけどそんなこともなさそう。
これは、緊張してる?
花火が始まってから、わざと先輩の耳元で話しかける。もちろん手は繋いだまま。
薮『綺麗ですね』
花火を見ていた先輩の肩が大げさに揺れる。
「綺麗だね。誘ってくれてありがと」
耳が少し赤くなっている。
先輩の、ちゃんと目を見て話してくれるところが好きだ。
女子の割に背が高いところも、よく見ると垂れ目なところも、浴衣の上からでも分かるスタイルのいい身体も。
薮『先輩、俺のこと好き?』
直接聞くのは初めてだ。
先輩はなんで答えるだろう。
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作成日時:2017年4月24日 8時