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寝る暇がないほど忙しいなんて、今さら慣れている。


それがこんなにも疲れたと感じるのは、こいつに触れられなかったからだ。


こいつと初めて会ってしまってから、自分がどういう気持ちで動いて休んでいたかも忘れてしまった。


『もう1回…』


『え、んっ…』


腰が抜けて立てないと言うのなら座ったままでいいじゃないか。


なんならこのままベッドに運んだっていい。


自分の煙草臭さなんか忘れてしまいそうなくらい、こいつの匂いが鼻腔を埋め尽くす。


柔らかい髪の感触が心地良くて何度も頭を撫でてしまう。


人前で頭を撫でるなんてことを自分がする日が来ようとは。


病棟で顔を見る度に、この身体を引き寄せてキスしたくなる。


仕事中でさえこんなことばかり考えていると知ったらこいつは、どんな顔をするだろう。


『せん、せ、もぅ…』


『まだ、』


離れたくない。離したくない。


目尻に浮かぶ涙は、苦しいから?それとも


『はぁ…なに泣いてる』


『ぁ、ん、ないてなっ…』


自分の頬に手を当てて涙を拭うその仕草さえも、可愛い。


『言わないと、ここで脱がす』


『脱がっ?!ちょ、やめっ!』


パーカーを捲り上げてズボンのボタンに手を掛ければ焦った声で止められる。


『泣くな。お前のそんな顔、見たくない』


本当に自分の手かと疑いたくなるような優しい手つきで頬を撫でてやる。


そうするとまたぽろりと零れる涙。


『んぅ…ひっ、せんせ…なんで…』


暫くして聞こえた嗚咽。どうやら原因は俺らしい。


『ひかるくん、と、抱き合ってた…』


途切れ途切れで聞こえにくいが恐らくこんなことを言ったと思う。


光?光がどうかしたか。


『光が、どうした?』


『ひかるくんのこと、好きなの…?』


好き?そりゃ親友だからな。少なくとも伊野尾よりは光の方が好きだ。


『ヤキモチか?』


『やきもち…?なんで…?』


あぁそうか。こいつは無自覚で、無計画で、俺のことをなにも知らないから、知ろうとしないから、可愛い。


『光は幼馴染なんだ。今までずっと一緒にやってきた、相棒みたいなもんだよ』


『あい、ぼう?』


『こんなキス、あいつとは出来ない』


もうすっかり熱が冷めたような瞳が悔しくて、もう一度深いキスをお見舞いする。


光とキスなんて、想像しただけで吐ける。

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しょぼん(プロフ) - 更新待ってました!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月15日 10時) (レス) id: 80f9088859 (このIDを非表示/違反報告)
いわし - これからの展開が気になります!!ぜひ、更新してほしいです!! (2019年3月1日 7時) (レス) id: 868e16e7f6 (このIDを非表示/違反報告)
- やぶあり、やっぱり大好きです!これからも頑張ってください!続き楽しみにしてます! (2018年11月2日 6時) (レス) id: 1ac15466af (このIDを非表示/違反報告)
- 次のお話はどんな感じ何でしょう!とても楽しみです! (2018年10月4日 18時) (レス) id: 1ac15466af (このIDを非表示/違反報告)
ney-ko(プロフ) - 凛さん» 凛さん、いつもありがとうございます!ありさんをひたすら愛でる薮さん、お楽しみください\(^o^)/ (2018年10月1日 19時) (レス) id: 279b6160ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ney-ko | 作成日時:2018年9月24日 5時

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