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『救急カートの中にあるボトルはなにを繋いでも命に関わるものじゃない。医者が来て指示を出すまでにルートを繋ぐためならどれを使ってもいいんだよ。キットは使っちゃダメだけどね』


赤い救急カートなんて、触ったのは研修時代。


『ルートは一番太い針でとって、滴下も適当でいい。急変時は全開だよ。俺が管理と家族に電話するから大ちゃんはバイタル測ってルートとって』


いつもはふざけて笑いながら仕事をしている光くんが、別人に見えた。


『大ちゃん、いってぇよぉ…』


『いま先生くるからね。もうちょっと頑張って。念の為ご家族にも来てもらうからね』


大の大人が泣くほど痛がっている。異常なのは誰が見ても明らかだ。


バイタルも測ってルートもとったけど、これで痛みが治まるわけじゃない。


先生、すぐ来るって言ったのに…


痛がる患者さんの手を握ってお腹を摩るしか、俺には出来なかった。


するとふわりと香った、嗅いだことのある匂い。


『悪い、遅くなった』


『先生?』


オペ着の上に白衣を羽織った医者の顔は、やっぱり見覚えがあるものだった。


『ちょっとどいてて。光呼んで』


ぽん、と頭に手を置かれて言われた言葉は、理解するのに数秒かかった。


『ひか、?あ、はい!』


あれ、あの人、この前の。見間違いじゃなければ、きっと。


『光くん、先生、来ました!』


『おぅ、なんだって?』


『いや、あの、光くんを呼べって…』


『はぁ?なんでだよ。ったく…じゃ大ちゃん、あとの患者さん頼んだ』


『はい!』


渋々、といった感じで患者さんの部屋へ向かう光くんを見送って、やっと少し安心する。


いま先生、俺の頭ぽんて撫でたよね。気のせいじゃないよね。


それはずっと、俺が求めていた温もりだった。


患者さんみんなが寝ているのを確認して、また詰所に戻ると光くんと先生が戻っていた。


『盲腸?』


『たぶんな。今から検査行くか。たぶんそのままオペになるからそのつもりで。鎮痛剤は今出したからまた繋げといて』


カタカタとパソコンを打つ先生の横に慣れた様子で立つ光くん。


盲腸…それなら安心だ。よかった、大事にならなくて。


『先生、だからオペ着…』


『あ?あぁ、着替えてたら遅くなった』


『お前はその前に煙草も吸っただろうが!』


『いって!もう光、痛いよ〜』


この人は、本当にあの日の人だろうか。

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しょぼん(プロフ) - 更新待ってました!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月15日 10時) (レス) id: 80f9088859 (このIDを非表示/違反報告)
いわし - これからの展開が気になります!!ぜひ、更新してほしいです!! (2019年3月1日 7時) (レス) id: 868e16e7f6 (このIDを非表示/違反報告)
- やぶあり、やっぱり大好きです!これからも頑張ってください!続き楽しみにしてます! (2018年11月2日 6時) (レス) id: 1ac15466af (このIDを非表示/違反報告)
- 次のお話はどんな感じ何でしょう!とても楽しみです! (2018年10月4日 18時) (レス) id: 1ac15466af (このIDを非表示/違反報告)
ney-ko(プロフ) - 凛さん» 凛さん、いつもありがとうございます!ありさんをひたすら愛でる薮さん、お楽しみください\(^o^)/ (2018年10月1日 19時) (レス) id: 279b6160ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ney-ko | 作成日時:2018年9月24日 5時

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