紫煙ヒトメボレ

愛ってやつを ページ23

『薮先生、よく笑うようになったよねぇ』


『これも愛のチカラなのかしらぁ』


『…やめてやれ』


いっそ清々しい薮の豹変ぶり。


その被害者はもちろん俺たち看護師だ。


先輩ナースの格好の餌食はもちろん大ちゃん本人。


顔を真っ赤にさせて隅っこで小さくなっている。


分かり易い態度でばかり愛情表現をするくせに、おそらく言葉にはしていないだろう。


まぁ大ちゃんだってガキじゃないし、そこら辺はもう管轄外。


家でどんだけベタついてんのか知らないけど、薮を見る限り、上手くいってるんだろう。





『…も、せんせ、』


『また先生って言ったな』


『だっ、てぇ…』


『こうた、って。呼んでみ？』


『こぅ、たぁ？』


無理やり名前を呼ばせて、背中に腕を回させて、深く深く縫い付ける。


こいつになのか、俺になのか。


ちったぁ大ちゃんの気持ちも考えてやれ、なんて。


もう何回光に言われたか分からない。


誰に何を言われても堂々としてりゃいいんだ。


隠すことは何もないし、やましいこともひとつも無い。


それでこいつが傷ついてるって言われたら、それは考えモンかもしれないが。


『嫌なことはないか？』


『へ？』


全くなにも分からないって顔。


『俺はどうも気持ちを分かってやれないらしいから』


『そんなこと、ないです』


照れてはにかむこいつのこの言葉が本音かどうかも、分かってやれないけれど。


『別に俺は隠してるわけじゃないよ』


『そうでしょうね』


『なにむくれてるんだ』


『スキンシップが過剰なんです！』


『は？』

愛したい気持ち→←こっそり教えてほしい

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す