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溢れた想いは ページ3

あの人、誰だったんだろう。


考えれば考えるほど、もしかしたら夢だったんじゃないかって思えてくる。


あのキスの感触が、まだこんなに残っているのに。


『ありおかぁ!!何回呼ばせんだ!!』


『うっわぁぁ!光くん!痛い!なに?!』


『なに、じゃねぇ!カンファ始まってんだよ!!』


気付くとみんな整列していて、俺だけがパソコンの同じ画面をいつまでもクリックしていた。


『す、すんません…』


こんな俺の失敗も、クスクス笑ってくれるのはこの部署の大好きなところだ。


『ったく。しっかりしろ』


3年も先輩の光くんは、新人の頃から俺をずっと可愛がってくれている。


光くんは既に次期主任と名高くて、院内のスタッフとも広く交流がある。


もしかして光くんならあの人が誰か知っているかも!と思ったけれど、なんの手掛かりもないし説明も出来ない。


煙草を吸う?背が高い?キスが上手い?


ダメだ。最後のなんて口に出せない。絶対ダメだ。


そんな俺に、夜勤中に奇跡が起きた。


『大ちゃん…お腹痛い…』


『ぇ、ちょ、本当?!』


患者さんにも大ちゃんと呼ばれ可愛がられている俺。馬鹿にされている?いいえ、違います。


事故で腕と足を骨折して先週手術も終わっている患者さんがお腹が痛いと言い出した。それも尋常じゃない痛がり方。


『腹痛じゃ下手に痛み止めは使わない方がいいかも。大ちゃん、当直に電話して』


『はい!』


痛みにのたうち回る患者さんは光くんが対応してくれて、俺は当直医に報告して指示を仰いだ。


『え、これなんて読むの?なに先生?まぁいいや!』


先生の苗字が読めなくて、でも先生の名前なんて知らなくてもなんとかなるからとりあえず電話!


『はい』


夜中の2時にかけた電話は、たったのワンコールで繋がった。


『お忙しいところ申し訳ありません。整形外科看護師の有岡です。骨折で入院されている患者様が腹痛を訴えていて、冷や汗と嘔吐もしています。診に来て頂けませんか』


『…バイタル測ってルート取ってなんか繋いどけ。管理にも電話して、家族も呼んどけ』


『ぁ、はい、』


『すぐ行く』


プツリと切られた電話。しまった、なんかって、なに。


『大ちゃん、先生なんだって?』


『えーと、バイタルとルート、管理当直と家族呼べって…』


『おっけ。なに繋ぐ?』


『それ、聞き忘れちゃって…』


光くんの溜め息が重い。

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しょぼん(プロフ) - 更新待ってました!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月15日 10時) (レス) id: 80f9088859 (このIDを非表示/違反報告)
いわし - これからの展開が気になります!!ぜひ、更新してほしいです!! (2019年3月1日 7時) (レス) id: 868e16e7f6 (このIDを非表示/違反報告)
- やぶあり、やっぱり大好きです!これからも頑張ってください!続き楽しみにしてます! (2018年11月2日 6時) (レス) id: 1ac15466af (このIDを非表示/違反報告)
- 次のお話はどんな感じ何でしょう!とても楽しみです! (2018年10月4日 18時) (レス) id: 1ac15466af (このIDを非表示/違反報告)
ney-ko(プロフ) - 凛さん» 凛さん、いつもありがとうございます!ありさんをひたすら愛でる薮さん、お楽しみください\(^o^)/ (2018年10月1日 19時) (レス) id: 279b6160ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ney-ko | 作成日時:2018年9月24日 5時

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