紫煙ヒトメボレ

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『お邪魔しまーす』


『光くん？！』


『おー、大ちゃん。お疲れ』


我が物顔で入ってきたのは光くんと、見たことのない、男の人？すごく綺麗な、男の人？


『帰れ』


『うっわ！超綺麗になってんじゃん！やぶん家とは思えねー！』


すごく綺麗な男の人は、口が悪いようです。


『大ちゃん？！大ちゃんだ！わー！本物！めっちゃ可愛いー！！』


『触るな！帰れ！』


『はぁ？やぶケチー！嫉妬深い男はうざいぞ！』


ひらりと薮先生の手を避けたその人は、俺のことをぎゅーっと抱き締めた。


うわめっちゃいい匂い。しかも近くで見るとさらに美しさが際立って。


あれでもこの匂い、どっかで。


『いのちゃん、その辺にしてやって。大ちゃんもパニくってるから』


『いいなぁ、ひかる。こんな可愛い子と毎日仕事してんの』


『俺のだよ』


『もう、やぶうるさい。なに』


『いのちゃんその辺にしてやって。大ちゃん固まってるから』


あぁそうか。光くんだ。この匂い。


『え？！じゃあこの人が光くんの？！』


『なーに大ちゃん俺のこと知ってんの？』


『光くんの可愛い彼女さん！』


『かの、じょ…』


綺麗な男の人と薮先生の声がハモった気がする。


その隣でやべぇという顔をする光くん。


俺、なにか言っちゃいけないことを言ったのかな。


プ、と吹き出したのは薮先生と綺麗な男の人、どちらが先だったのだろう。


次の瞬間には2人は腹を抱えて笑っていた。


『彼女っ！俺がっひかるのっ、やべぇウケる！』


『光ってそゆこと言うのな！めっちゃツボだわ！』


『うるっせぇな！嘘ではないだろ！』


ゲラゲラと笑う2人に真っ赤になって怒る光くん。なんだか俺まで楽しい気持ちになって思わずふふっと笑ってしまった。


『大ちゃんが余計なこと言うからだろぉ！』


『えぇ？！なんで俺？！』


光くんの怒りの矛先は発言した俺へ。


『くく…彼女なのは、光の方』


『へ、え？』


『そんなことない！』


『往生際が悪いよ、ひかる〜』


彼女が光くん、ということは。どういうこと。


『ひかるは俺にされる側。大ちゃんと一緒』


『だから違うって！そうじゃない時もある！』


『へぇ。そうなのか』


『もう！薮うるさい！』


綺麗な男の人は、光くんの頬にちゅっと唇を寄せた。


『後輩の前で格好つけるひかる、超可愛い』


いつもは格好良くて頼りになる光くんが、少し可愛く見えた。

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