2 ページ14
光くんの前でくだらないことで泣いてしまったと後悔している。
薮先生は格好良くて、仕事も出来て、モテないはずがない。
それに比べて俺は、こんなにちんちくりんで仕事も凡ミスばっかりで、モテる要素なんて一つも持っていない。
たまたまこの屋上で出会って、同意ではないキスをした。それが始まりだった。
先生にとっては、ただのお遊び。
あの日うちに来てくれたのだって、本当にたまたまなのかもしれない。
だって俺は、先生の連絡先すら知らないのだから。
『なに泣きそうな顔してる』
『っ、なんでも、ないです…』
少し辛そうな顔をした先生は、また奪うように俺の唇を塞ぐ。
遊ばれているだけでもいい、なんて。
それじゃ嫌だと思ってしまった今となっては、もう無理だ。
堪えきれない涙が、ぽろりと流れた。
『泣くな』
そんなこと言われたって、勝手に出てくるんだから止められない。
『俺のやること以外で泣くお前は、見たくない』
俺の涙を拭う指は、とても暖かい。
『これだけじゃ伝わらないか…』
『んぇ？』
『光の前で泣いたんだろう？俺が遊びでこんなことをしてるって』
光くん、話したんだ。自分が入れないその仲の良さに、また胸がツキンと痛む。
『悪いが俺は、なんとも思ってない奴にこんなことをするほど暇じゃない』
『毎日毎日来るか分からない奴に会うために1本で済む煙草を2本も3本も吸わない』
『風邪くらいでぶっ倒れた奴を家に運ぶほど優しくもない』
『それに、一緒に居たくもない奴を家に住まわせる気もない』
ころんと広げられた俺の手に転がったのは、銀色に光る、鍵。
『家事は全部お前の仕事だ。ついでに、毎日俺のことをこうして癒せ』
『なに、それ…』
涙は止まらないどころかひどく溢れるばかり。
『俺、ばかだから、分かんないっ…』
こんな時ばかり自分のことを馬鹿と呼ぶ俺は、きっと相当ずるい。
『はぁ…お前は…』
それは呆れたような溜め息ではなくて、慈愛に満ちたものだと分かる。
『俺が、お前にいて欲しいんだ』
きっとこれは、先生にとって最高の愛の言葉。
『せんせい、好きっ…』
『くく。やっと言ったな。待ちくたびれた』
嘘だ、待ってなんかないくせに。俺の気持ち、知っていたくせに。
『ただ覚悟しろよ。もう我慢しないからな』
『がまん？』
『うちに来た日に、お前の全部を頂くからな』
そんなの、俺だって望んでる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 331人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しょぼん(プロフ) - 更新待ってました！これからも頑張ってくださいね！！ (2021年8月15日 10時) (
レス) id: 80f9088859 (このIDを非表示/違反報告)
いわし - これからの展開が気になります！！ぜひ、更新してほしいです！！ (2019年3月1日 7時) (レス) id: 868e16e7f6 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - やぶあり、やっぱり大好きです！これからも頑張ってください！続き楽しみにしてます！ (2018年11月2日 6時) (レス) id: 1ac15466af (このIDを非表示/違反報告)
凛 - 次のお話はどんな感じ何でしょう！とても楽しみです！ (2018年10月4日 18時) (レス) id: 1ac15466af (このIDを非表示/違反報告)
ney-ko(プロフ) - 凛さん» 凛さん、いつもありがとうございます！ありさんをひたすら愛でる薮さん、お楽しみください＼(^o^)／ (2018年10月1日 19時) (レス) id: 279b6160ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ney-ko | 作成日時：2018年9月24日 5時
