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分かった気にさせて ページ11

『あら、大ちゃんおはよう』


『おばさん!おはようございます!』


俺が住んでいるのは病院から徒歩5分の古いアパート。


古いけど大家のおばさんは良い人だし、なにより職場が近いことは遅刻魔の俺にとって最高の条件。


『行ってらっしゃい』


『いってきまーす!』


行ってきます、そう言える人が居ることはとても幸せだ。


『大ちゃん、なんか顔色悪くない?風邪?』


『え?そんなことないですよー』


って思っていたのは朝だけで、自分よりも周りの方が俺のことをよく見てる。


昼休憩を終える頃には俺はフラフラだった。


『大ちゃん!』


珍しい光くんの慌てた声が、遠くに聞こえた。






『俺が運ぶ』


『なんでお前ここに、』


ふわふわと夢現の境で、大好きな人たちの声が聞こえた。


俺の好きな匂い、好きな声、大好きな、あの感覚。






『…あ、れ?』


目を開けると間違いなく自分の部屋で。仕事してたはずなのに、なんで。


『起きたか』


声のする方を見ると、まさかの


『先生?!なんでっ!』


『起きなくていい、勝手に入って悪かった』


額に掌を当てられて枕へ戻される。


『病院で倒れたんだよ。たまたま俺が居たからここまで連れて帰ってきた』


『なんで、家…』


『光に聞いた』


あぁ、そうか。


でもこんなボロアパートの小さい1Kの部屋に先生が居るなんて、似合わなすぎて。


『恥ずかしい…』


『なにが』


『こんな狭くて、汚い部屋…』


『別に。普通だろ』


『先生の部屋はもっと広いですよね』


『今はな。学生の頃は俺もこんな感じの部屋だったよ』


先生にも学生の頃とか、あるのか。想像つかない。


『お前具合は』


『だいぶマシです。あの、ありがとうございました』


ふにゃりと笑った顔は、いつもの不敵な笑みではなくて。


初めて見るその笑顔に、心臓がきゅうんとなった。


『先生、もう大丈夫なので…』


『あぁそうだな。俺が居てもなんの役にも立たないもんな』


『そういうわけじゃっ…』


『いやマジで。俺お粥とか作れないし』


『…え?』


少し恥ずかしそうに目線を逸らす先生が、初めて可愛く見えた。

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しょぼん(プロフ) - 更新待ってました!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月15日 10時) (レス) id: 80f9088859 (このIDを非表示/違反報告)
いわし - これからの展開が気になります!!ぜひ、更新してほしいです!! (2019年3月1日 7時) (レス) id: 868e16e7f6 (このIDを非表示/違反報告)
- やぶあり、やっぱり大好きです!これからも頑張ってください!続き楽しみにしてます! (2018年11月2日 6時) (レス) id: 1ac15466af (このIDを非表示/違反報告)
- 次のお話はどんな感じ何でしょう!とても楽しみです! (2018年10月4日 18時) (レス) id: 1ac15466af (このIDを非表示/違反報告)
ney-ko(プロフ) - 凛さん» 凛さん、いつもありがとうございます!ありさんをひたすら愛でる薮さん、お楽しみください\(^o^)/ (2018年10月1日 19時) (レス) id: 279b6160ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ney-ko | 作成日時:2018年9月24日 5時

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