検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:67,489 hit

2 ページ2

口から漏れる自分の甘ったるい声に耳を塞ぎたいのに、生憎火傷した指は腕ごとこの人に拘束されて水の中。


頭をがっしりと掴んで呼吸さえも奪われるようなキスに、元気な方の腕はもう使い物にならなかった。


腕どころか、足も、膝も、腰も、力が抜けそうだ。


『は、ぅん…ふ、ぁ…』


俺、信じられない。初めて会った名前も知らない男の人と、深夜の屋上でキスしてる。


現実とは思えないこんな状況なのに、誰かに見られるかもしれないのに、気持ち良すぎてどうかなりそう。


口から出る嬌声も止むことを知らない。


抵抗しようとしていた腕はいつの間にかこの人の背中に回っていて、もっともっととせがむ様に服を掴んでいた。


タバコの臭いなんて嫌悪しかなかったはずなのに、なんでこの人の香りはこんなに頭がクラクラするんだろう。


『待っ、も、だめ…』


息も、心臓も、もうこれ以上もちそうにない。


『大丈夫?』


『だ、いじょうぶ、です…』


嘘だ。腕も足も力が入らないし、なんなら頭もうまく回らない。


『ちょっとやり過ぎた』


『ひゃ、っん、触らないでください!』


『そんな煽るような声出されたら、止まらなくなる』


耳を撫でられて、そのままするりと俺の身体をこの人の大きな手が這っていく。


俺、知らない人となんてことを。


『君…』


『は、ぃ?』


『…よく見ると可愛いね』


よくあるナンパの常套句に、一気に頭に血が上る。


『さいってい!!』


気付けばその人の頬を平手打ちして屋上から出ていっていた。


『…らしくないな』


綺麗に整った髪をぐしゃりと乱してその人がそんなふうに呟いたことなんて、もちろん知らない。


『ていうか、あの人誰だったんだろ…』


あの時間に屋上にいるってことはスタッフか患者、まさか医者?広い病院の中じゃ会ったことない人も多いしましてや私服じゃもう分からない。


でも初めてなのに、あんなキス…まだ感触が残ってる。あの人の手が顔や耳に触れる度に口から勝手に吐息が漏れて、あられもない声が出た。


あんなことされたけど、よくみたらすっごいイケメンだったし。まぁあんなイケメンがなんで俺なんかに、って思う部分もあるし。


忘れよう。犬に噛まれたとでも思って。

溢れた想いは→←ファーストコンタクト



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (158 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
331人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

しょぼん(プロフ) - 更新待ってました!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月15日 10時) (レス) id: 80f9088859 (このIDを非表示/違反報告)
いわし - これからの展開が気になります!!ぜひ、更新してほしいです!! (2019年3月1日 7時) (レス) id: 868e16e7f6 (このIDを非表示/違反報告)
- やぶあり、やっぱり大好きです!これからも頑張ってください!続き楽しみにしてます! (2018年11月2日 6時) (レス) id: 1ac15466af (このIDを非表示/違反報告)
- 次のお話はどんな感じ何でしょう!とても楽しみです! (2018年10月4日 18時) (レス) id: 1ac15466af (このIDを非表示/違反報告)
ney-ko(プロフ) - 凛さん» 凛さん、いつもありがとうございます!ありさんをひたすら愛でる薮さん、お楽しみください\(^o^)/ (2018年10月1日 19時) (レス) id: 279b6160ea (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ney-ko | 作成日時:2018年9月24日 5時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。