黄緑 ページ48
まったく裕翔も悪趣味だ。人のことは言えないけれど。悪趣味っつーよりガキだな。
個室から聞こえるのは小さな声で、ほとんどがシャワーの音に掻き消されている。
それでも聞き慣れたマネの喘ぎ声だけは、しっかりと耳に入ってくる。
『嫌ってなに？俺の言う事聞くんでしょ？』
確かに、マネからの否定的な言葉は俺も聞いたことがない。結構酷い扱いしてる自覚はあるんだけどな。
「や、ぶさん、聞かないで…おねが、します…」
裕翔との行為を聞かれたくないのか？俺にこんな声を聞かれるのなんて今更すぎるだろ。
どうにもマネの思考回路は読めない。
『いく時はいくって言えよ？』
『薮くん鬼畜〜』
「っ、なか、じまさ…」
ぐちゅりと深く挿し直したのだろうか。聞き覚えのあるマネの限界を迎えるであろう声。
無駄な抵抗は本当に無駄だ。
どれだけ否定的な言葉を吐いたって、マネは俺たちに従う。
そして身体は、なによりも正直だ。
『ほら、声出して、薮くんに聞かせてあげて』
「こんな、ぃやっ、」
扉一枚がもどかしい。いっそ入り込んで裕翔と2人で可愛がるのもアリかもな。
でもどうしても、マネがここまで嫌がる理由が思い浮かばない。
『いきそうなんでしょ？薮くんに言わなくていいの？』
「言わなっ、」
『ここから出たら、覚悟しておけよ』
夜は俺がマネを連れ込めばいいだけの話だ。
余計な手段を持たない俺たちは、マネとまともに話す方法すらも知らない。
『お前は変態かよ』
「…違います」
いやいや、俺がいるって知りながらあんだけ乱れりゃ誰でも変な性癖だと思うぞ。
『んで？なんであんなに嫌がった』
「中島さんの要望にお応え出来なかったのは申し訳なかったです」
『俺が言いたいこと、分かるだろ？』
俺が知りたいのは紙面上の話じゃなくて、マネの腹ん中。お前は一体、なにを考えている？
「私はみなさんが思っているような出来た人間ではありません」
バスローブを着てソファに姿勢良く座るマネは、まだ俺のことを恋人と思っていないらしい。
「あれが薮さんじゃなかったら、私は中島さんの言う通りに出来ました」
俺のせいか。いや違うか。
「恋人として薮さんに抱かれている時の、こと…思い出してしまうので…」
俺が誰にも見られたくないのと同じだろうか。
俺に抱かれている時のこいつが一番可愛いと、自慢してやろうか。
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作者名：ney-ko | 作成日時：2018年5月29日 1時
