黄色 ページ46
この前の撮影で、使えそうな場面だけ使いたいと話が出た。もちろん俺たちではなくレコード会社から。
『え、それも俺たちが決めんの?』
「他に誰が?」
『だってお前の…』
「構いません。お役に立てて何より」
顔が映るわけじゃないし、あんな馬鹿な女共になるよりはマシかと思った。たぶんみんなも同じ考えだったんだろう。
「納得いかないですか?」
『…そういうわけじゃないけど…』
深夜のスタジオは人も疎ら。ここにいればマネも来てくれるんじゃないかって、心のどこかで期待している自分がいる。
「すみません、出しゃばりすぎました」
『あれは!…あれで、良かったと思う。ただ今は、俺の中で整理が出来てないだけで…』
あの時初めて、マネの身体を見た。
俺が想像していたよりずっと、ずっと綺麗で。触れたい、と。抑えられなくなりそうな自分の欲が汚らわしい気がして。
他のやつらはきっと、マネを見せびらかすことが出来て喜んでいるだろう。
俺は…俺は…?
「八乙女さんだけですよ」
『なにが…?』
「厚かましいですが、私の意思でここに来たいと思っています」
厚かましい、とは思わないし。俺がここに居ることを知っているのはおそらくマネだけだし。俺がここに居て、マネが来て、それは、どうしてだ?
「誰に頼まれたわけではありません。もちろん八乙女さん、あなたにも」
『…回りくどいの、苦手』
「そうでしたね。では失礼を承知で言います。私がプライベートでもお会いしたいと思うのは八乙女さんだけです。だからなんだと思われるでしょうけど、自分で驚いています」
この仕事を始めて初めての気持ちです、って
『どんな口説き文句』
俺たちは友達じゃない。それはあいつらも同じことで、かといって他人にもなれないのに家族のような存在。
マネはマネージャーでいる限り家族にも、友達にも、恋人にもなれない。
「誰か、来たら…」
『分かってる』
それでも、離したくなかった。きっとマネの気持ちと俺の気持ちは全くの別物。
「口説いたわけじゃないですよ」
『だから分かってるって』
言うなよ。分かってるから。
かといって友達になろうってのもおかしな話だ。
俺はこのままで居たい。ずっと。
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作者名:ney-ko | 作成日時:2018年5月29日 1時