9色のtiepin (ページ5)

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『お前、俺らのことバカにしてんの』

「そんなつもりはありません」

『じゃあなに。薮の女気取りか？』

「メンバーの評価を下げるようなことは言わないでください」

『お前に言われたくねぇんだよ』

この女の喋り方が気に入らなかった。

おそらく歳も上で、きっと業界のこともこいつの方が俺より分かってる。じゃなきゃマネージャーになんてなれない。

誰よりも俺たちのことを分かってる、そんな話し方をするこいつが、気に食わない。

でも俺も大人になったんだし、気にせず過ごす術はいくらでもあったんだ。

それなのに、薮がこいつにハマったから。

『お前の目的はなんだ』

「そんなに私がマネージャーになったことが気に入らないですか」

『そりゃあな』

「選んだのは事務所です。女性関係のスキャンダルさえ出なければ私がマネージャーになることはありません」

『なに、俺のせいだって言いたいの？』

「違います。女性関係のスキャンダルなんて出て当然です、アイドルですから。一人一人自律して活動しているグループならまだしも、今はグループとしての活動が主です。その中で自律していない、する予定のないメンバーのスキャンダルは、グループの命取りになりかねます」

貶されてる気しかしない。腹立つ。

「スキャンダルは芸能人のステータスです。事務所はスキャンダルをコントロールしなければなりません。私はその為にマネージャーとして属しています」

まるで俺からの質問を予想していたような模範解答がペラペラと並べられる。

「貴方たちは商品です。私たちはそれを売らなければなりません。これから貴方たちの行動のすべての責任は、私が負うことになります」

『お前のために、自分勝手な行動はやめろって？』

「…伊野尾さんは、頭が良いのに馬鹿ですね」

『はぁ？！それはバカにしてんだろ！』

「貴方たちの自分勝手な行動は、すべて私が受け止めます。最初に言いましたよね、要望にはお応えすると」

『…死ぬこと以外は？』

「えぇ。死んでしまっては元も子もありませんから」

薮はそれを甘んじて受け入れた、そういうことなんだろうか。