9色のtiepin (ページ20)

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『有岡くんがやらなかったら俺がやってたかも』

『あぁ、俺も』

「勘弁して下さい」

『大ちゃん反省して』

『なんで俺が』

あの後、薮くんに引き剥がされて頭を引っ叩かれた。

そこまで頭に血が登っていたわけでも、我を忘れていたわけでもない。

ただこいつに、思い知らせてやろうと思っただけ。

『あぁいうのもOKなわけ？』

「必要なことであれば」

『はぁ…』

『ま、そーいうスタンスなんだもんな。仕方ない』

嫉妬とか、そんなんじゃない。

でもこいつは今俺たちのマネージャーなんだ。

誰にも聞けない、聞いてはいけないのであろうこいつのプライベートが、思っていたよりも重い足枷になっている。

『今日は、うちに泊まって』

「分かりました」

こっそり耳打ちのようにした約束も、きっとこいつはなんとも思っていない。

それは少し、悔しかった。

『家に泊まったの、誰？』

「山田さんだけです」

うわ意外。でもないか。

山田は落ち込む時は一気に沈んで次の日の朝には戻ってくる。

その時にたまたまマネがいた、そういうことだろう。

『ほんとに名前、教えてくんねぇの？』

「名前を教えたらマーガレットなんてなってません」

『そりゃそうか』

キャサリン、マーガレット。あとはなにがあるかな。普通にハナコとかじゃ駄目かな。ダサ。

『なんて呼ばれたい？』

「なんでもいいです」

『だよなぁ』

こいつの呼び方なんてなんでもいいんだ、本当に。

でも俺のことは、名前で呼んでほしい。

『名前で呼んで…』

「皆さんの前では呼びませんよ？」

『今なら呼んでくれんの？』

「有岡さんがそれを望むのなら」

『まじ？！呼んで！大ちゃんじゃねぇよ？大貴！』

隣に横たわるマネの上に覆い被さって両手で顔を固定する。

期待たっぷりの目をしてるだろうな、俺。なんでだろう。

小さく息を吐いて

「大貴」

そうマネの口が動いた瞬間、それをすぐに塞いだ。

さっき楽屋で無理矢理した時とは違う。しっかりとマネの腕は背中に回ってる。

この身体を何人の男が抱いたのか、そんなことに興味はない。

俺がやりたい時にやれたら、それで。