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慧『母さーん』
薮『慧!深雪さんから離れろ!』
侑『おとーさん!ゲームの続き!』
涼『侑李!父さん!キッチンに入らないで!』
下の階が騒がしいのはいつものこと。
体調が優れない俺は部屋で1人、そんなバタバタをBGMにして眠りにつこうとしていた。
雄『光くん?大丈夫?』
光『…ん、ちょっとうるさい』
雄『だよね。言ってくる』
隣の部屋で裕翔と圭人の宿題を見ていた雄也が、あまりの騒がしさに気を遣うなんて。
雄也も大人になったんだな、なんて的はずれなことを思うくらいには体調が悪い。
圭『光くん大丈夫?』
裕『お父さんに来てもらお、ね』
様子を見に来てくれた優しい弟たちにも、頷くだけの返事しか出来ない。
「光くんごめん、うるさかったね。キウイ食べる?」
基本、放任主義で奔放な母さんだけど、昔から俺にだけ過保護な気がする。
長男なんて本来であれば一番無下にされやすい立場な気がするのだけど、型破りな母さんらしい考えだ。
光『…父さんは?』
でも一番おかしいのは、異常なほどに父さんに懐く自分だった。
薮『ひかる、大丈夫?』
そしてまた父さんも、なぜか俺にだけ甘い。
「光くん、ゆっくり休んでね。薮くん、あとお願い」
薮『うん、下は頼むよ』
俺が体調の悪い時は、昔から父さんが傍に居てくれた。
俺はそれがどうしようもなく嬉しくて、信じられないほど安心できた。
『頭重い…』
『お前低血糖だよ。深雪さんが持ってきてくれたキウイ食べな』
『食べさせて…』
『ん、ほら。あーん』
母さんの切ったフルーツを父さんに食べさせてもらう。
俺にとっては最上級の贅沢だった。
『…もういらない』
『また入院して点滴になるぞ』
『注射、やだ…』
『ひかる…』
ここぞとばかりにワガママを言って父さんを困らせる。
困ったように笑う父さんの顔が大好きだった。
『ひかる、おいで』
両腕を広げた父さんに抱きつく。
思っていた以上に温かくて、急激に眠気が襲ってくる。
『ひかる、ごめんな。一番上だからって放ったらかしにして』
『…ん、そんなこと、ないよ』
頭を撫でてくれる父さんの手は大きくて、優しくて、ゆっくりと瞼が下がっていく。
『いつも母さんのこと、助けてくれてありがとう』
『父さんの、大切な人だからね…』
『え?』
まだなにか父さんが言っている気がするけれど、俺の意識はそこで途切れた。
『敵わないな、光には…』
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優子 - 読みました。光君大丈夫かな?これからどうなるか?気になります。 (2017年8月23日 23時) (レス) id: baaab4d872 (このIDを非表示/違反報告)
優子 - 読みました。これからどうなるか?気になります。 (2017年8月21日 17時) (レス) id: baaab4d872 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2017年8月21日 4時