思春期 入院の知らせ ページ9
それは、突然のことだった。
ある日の休日、私は自分の部屋でゆったりと小説を読んでいた。そのあと母親が心配そうな顔で部屋に入ってきた。片手にスマートフォンを持ちながら、こう言ったのである。
「静稀ちゃん、前から持ってた病気が急に悪化して先程倒れちゃったんだって。病院に運ばれたらしいわよ。」
一瞬、脳の思考が停止した。
静稀ちゃんが、倒れた。つい先日まで元気だった静稀ちゃんが。
「え…」
「確か心臓が悪いのよね…大丈夫かしら。」
「私、お見舞い行ってくる。静稀ちゃんが普段通ってた、駅の前の病院だよね」
慌てて立ち上がり、出かける準備をしようとする。
「ああ、だめよ。今家族以外面会禁止になってるから。心配な気持ちはわかるけど…」
「分かった…。」
私は出かける準備を止めて、そのまましゃがみこんでしまった。
静稀ちゃんは大丈夫なのだろうか。もしこのまま一生意識が戻らなかったり、どんどん重症化していったらどうしよう。静稀ちゃんと一緒に中学を卒業したい。
心配で、体中にぞわぞわとした感覚がはしる。
そういや、應治はこのこと知っているのだろうか。
もし知らないなら、教えなきゃいけない。
應治も静稀ちゃんの大切な友達だ。
「ちょっと應治にこのこと伝えてくる。」
そういって私は、自分の部屋から飛び出した。
玄関の扉を勢いよく開けると、ガン、と何かとぶつかった音がした。
「痛っ…」
目の前には應治がいた。
ドアの角にぶつかってしまったのだろう、可哀そうに。
というか今はそれどころではない。私は慌てて應治に話しかけた。
「静稀ちゃんのこと聞いた？」
「聞いた。静稀……大丈夫かな。」
應治も心配そうな顔をしていた。ずっと3人で過ごしていた私たちにとって、誰か一人がかけるというのはあってはならないことである。
ふと、初めて静稀ちゃんが体のことを教えてくれた日のことを思い出した。
その時私は特に心配はしなかった。確か、
「＿綺麗な花だったから。」
「え？」
「私ね、静稀ちゃんに体のこと初めて教えてもらった時。静稀ちゃんは綺麗な花だから神様も大事に育ててくれると思ったの。」
應治は何を話しているのかわからないという表情をしている。それでも私は話をつづけた。
「けど、今考えればわかる。神様だって欲にまみれてるから、綺麗なものを育てるとは限らないよね。すぐつんで、自分のものにするかもしれない。」
「愛華ちゃん…」
神さまだって、綺麗な人とは限らないんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Riruri - シャーロックさん» なるほど、小公女セーラですか…その発想こそなかったですが、言われてみたらそんな気もしてきます。憧れの御方にそう言って貰えるだけでとてつもなく光栄です。オリ小説をもっと増やしてく予定ですので、もし公開した暁には読んでくださると嬉しいです🤭 (5月29日 22時) (
レス) id: 7e45e119a7 (このIDを非表示/違反報告)
シャーロック(プロフ) - Riruriさん» 愛華ちゃんは私の大好きな「小公女セーラ」に似ています。いつも夢を信じている前向きな女の子は内側から輝くクリスタルのようで魅力的です。Riruriさんの他作品も読みたいのですが、運悪く元ネタを知らないんですよ💦創作についてもっと語り合いたいのに〜 (5月27日 15時) (レス) id: 64edf4e902 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - シャーロックさん» ワワワまさか読んでくださるとは……!!本当にシャーロックさんの文章からお話まで全てが尊敬と憧れの塊なのでそう言っていただけて感激感謝です😫💕愛華ちゃんはとにかく“プリンセス”の精神で書いてます。そこを感じ取って下さって嬉しいです!! (5月27日 14時) (レス) id: 7e45e119a7 (このIDを非表示/違反報告)
シャーロック(プロフ) - こんばんは！素敵な内容で一気読みしてしまいました。愛華ちゃんの純粋さはRiruriさんの心の美しさが表れているんでしょうね……。王子チャーミーさんが何故喋れるようになったのか、凄く気になっています。更新楽しみにしていますね！ (5月25日 21時) (レス) id: 37fed7f1d4 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - 襲さん» ありがとうございます〜！何に使うかまだ決めかねていますが…絶対使います！ (2023年1月27日 16時) (レス) id: 3a997f42cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Riruri | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/rirurihmp04/
作成日時：2022年3月9日 20時
