XIII ページ13
「女、それを手当てして早く治せ」
どうやら私は貴様から女に昇格したようだ。
「心配してくれるのね」
やっぱり殺生丸は優しい。
「たわけっ！」
邪見一々煩い。
「煩い邪見。女、私の邪魔になるようなら捨てる」
殺生丸も同じように思ったようで、邪見に言う。
「じゃあ急いで治さなきゃね。ここら辺に薬草ない？」
手当てするにも、救急セット持ってないし、ここには初めてきたんだから、薬草がどこにあるかなんてわかるわけない。
「そんなもん自分で探してこい！」
なんでこうも邪見は突っかかってくるかな。
「このすぐ先だ」
どうやら薬草があるのはちょうど進む方角の近いところらしい。それならちょうどよかった。近くにはないとか言われたらどうしようかと……
「女、阿吽に乗れ」
「いいの？」
「怪我人の歩く速さに合わせていては、目的地まで当分たどり着けん」
私はそれもそうだね、と返事をする。邪見は大分大人しくなったと思ったら、どうやら口をポカーンと開けて、静止していた。道理で大人しいわけだ。私はそう思いながら阿吽に乗る。その間、殺生丸は横目で私の方を見て、私が完全に阿吽に乗ったら、歩きだした。やっぱり優しい。
「せ、殺生丸様がそこまでするなんて……」
「邪見、置いてくぞ」
「お、置いてかないで〜！」
殺生丸は置いていくといいながら、邪見がついて来れるように少しだけ歩くスピードを落としている。もちろん、誰も気づけないくらいほんの少し。いや、阿吽は気づいてるかもしれないけど。私は素直じゃない殺生丸と、置いてかれないように必死な邪見のそのやり取りがおかしくてふふっ、と笑ってしまう。
「なんだ」
ああ、そういえば殺生丸って耳よかったんだよね。普通の人なら聞こえないくらいだったんだけど。
「別に」
私がそう言うと、殺生丸はまた黙る。でも、殺生丸が私のことを少しでも気にしてくれているって考えると、なんか嬉しいな。こんなこと考えてて、また笑うと殺生丸がなんか言ってきそうだからもう考えるのはやめる。
「おい、女」
女に昇格したのはいいけど、女女言われるのはちょっと嫌だな。
「私は叶夢、ちゃんと名前あるのよ」
「叶夢、薬草畑についた。あとは自分でしろ」
「あ、ああもちろんそのつもりだよ」
確かに殺生丸には名前で呼んでもらいたいと思った。だけど、本当に名前で呼んでもらえるなんて。それに、名前を呼ばれた時に感じたこの気持ち。なんだろう……
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ピス - 面白かったです｡早く続きを見たいです｡ (5月6日 12時) (
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作者名：ゆい | 作成日時：2019年2月9日 8時
