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境界線 ページ14

真紀がすり抜けていったドアがゆっくりと閉まるのをニカの手が止めた。



どういうこと?



混乱する私の前に立つのは、ひどく悲しそうで苦しそうな顔をしたキミ。



「ご………ごめん、ニカ。
あの……今日のすき焼き、なくなったの。」





上手く話せない。


上手く笑えない。





羽織ったままだったパーカーの袖をギュッと握ってから、声が震えそうになるのを耐える。



「真紀から………連絡なかった?」


「………あったよ。」



ニカの声が凄く冷静で、何の感情も読み取れなくて怖くなる。

忙しいはずのニカに、当日のドタキャンをしたこと、怒ってくれた方が100倍気が楽だ。

なのに、私に向けられる言葉は、真紀とニカの優しさに溢れていて、私の胸を締め付けた。








「『Aが、また、ひとりを選ぼうとしてる』って。」








ドアを支えるニカの拳がグッと握られる。


私の部屋への境界線を越えようとするニカを裸足のまま飛び出して、その胸を両手で押し返した。





掌に伝わる、ニカの鼓動。





ニカは、確かにここにいる。







それは、

私にとってとても幸せで、

誰かにとってとても悲しい出来事。







「ごめん、…………今日は、帰って?」


「ダメ。」


「また、別の日、設定するから……。」








「もう、次の約束、しないつもりだろっ!」








ニカの強い口調に怯んで、胸を押す手から力が抜ける。

その瞬間を逃さないニカが、境界線を強引に踏み込んでくる。




「待って!ニカ………っ!」




ニカの背後でゆっくりと閉じていくドア。




ゴトッと鈍い音と共に転がるボトル。






軽く弾んで、



開いた箱から、



散らばる






ニカの大切な大切な、宝物。






熱いニカの手が、私の腕を掴んで、その胸へと納めた。





「Aちゃんが………ひとりで泣いてるなんて、オレ、耐えらんないよ……。」




「…………っ、ぅ。」




「…………ごめん、オレのせいだね。」





俯く視線の先に散らばるDVD。



リビングから微かに聞こえてくる曲が切なくて。


きっと、ニカにも聞こえているはずのその歌詞みたいに、ギュッと強く抱きしめる腕に力が入った。









「離れていかないでよ………。」








ニカの掠れた声が、耳元で切なく響く。




私を抱きしめるニカの左手首には、ブレスレットが揺れていた。

笑顔と涙→←親友だからこそ



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植尾あい(プロフ) - 千明さん» if聞きながら?!私、自分の書いた妄想のくせに、それやると悲しくて涙ぐむんですよ……どうかしてる。祈りも最近やばいです。シーンタイトルにしちゃいました……切なくて苦しい展開ですが、この先の二人信じて見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ゆうさん» お久しぶりです!もう、ウタゲ終わってキスブサもおやすみで、本当にニカ不足(・_・、) あ、でも、プレバトは、可愛かった!お話の方は、切ない展開ですが、リアル二階堂くんに癒やされながらがんばります! (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - 由夏さん» ありがとう(ノД`)でも、ちょっと切なすぎる展開。二人が強く心を繋いでいてくれると信じて、書き続けます。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - amiさん» お久しぶりです(*´∀`*)ノamiさん。切ないけれど、お互いを求め、思いやる気持ちが伝わっていたら嬉しいです。思いやるあまりに少しずつズレてしまった思いが、この先、どうなっていくのか見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - chizuruさん» 秋の夜長のお供になれたでしょうか?こんな切ないシーンお供にしてもいいのかなぁ。でも、そう言ってもらえて嬉しい。そして、どこか当てはまる歌詞が切なさの中に温かさを感じさせてくれる。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年7月23日 7時

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