私の名前 ページ12
｢A……どこへ行っていたの？｣
地を這うように低いお母様の声に腹の底が冷えるような感覚になる。怯えているのが、嘘をついているのがバレないように口角を上げた。
｢花達とお喋りしていたら時間が経っていて……遅くなってごめんなさい｣
わたしはアリスだから、噂好きな花たちとお話をしていたの。歌を歌っていたの。
そう思い込んで、それが本当だと信じて信じて自分を騙して、笑ってアリスになりきる。
｢うそよ、そんなのうそ。そう言ってあなたも離れていくんでしょう！？｣
お母様の耳を劈くような悲鳴に、思わず眉が歪んだ。それを悟られないよう口角を上げて、上げて、大人しく佇む。
｢どうして！！ どうしてどうして！！ 大人しくしてろって、あんたはずっと、ここにいろって、どうしてそれができないのよ！！！！｣
勢いよく飛んできたトランプは、わたしの頬を、服を、足を、喉を掠めて後ろの壁に突き刺さる。ナイフで切られたような切り傷がひりひりと痛むけど、それでも笑顔はやめない。
私はアリスだから。
｢女王陛下｣
｢うるさい！！ うるさいうるさいうるさいうるさい！！！ おまえが、おまえがいるから！！！｣
可哀想なA。
でもね、悪いのもA。
だからそんな目にあうんだよ。
惨めで滑稽で汚くて馬鹿みたい。
アリスは良い子だから、アリスは可哀想じゃないから、だからアリスは幸せなの。
トランプはついに肉を抉って、治りかけていた傷口が開く。痛みはなくてじんじんと痺れるように熱を持つそこに、きっと数分後襲ってくるであろう痛みに嫌気がさした。
でも大丈夫、わたしはアリスだから。笑っていればいいの。完璧なアリスだから。
｢嗚呼、私の可愛いアリス｣
ほら、お母様は笑ってくれた。
Aなんてここにはいないの、ここにはアリスしかいないの。
アリスはAと違うの。
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あ(プロフ) - 早桃さん» ありがとうございます〜！最後までお付き合い頂きありがとうございました；； (2022年10月19日 10時) (
レス) id: fb59469920 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 完結おめでとうございます！！めちゃ面白かったですー！！！お疲れ様でした😊 (2022年10月18日 20時) (レス) id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - クロノトさん» ありがとうございます！最後までお付き合い頂きありがとうございました！！ (2022年10月17日 2時) (レス) id: e349160874 (このIDを非表示/違反報告)
クロノト(プロフ) - 最高すぎる終わり方でしたお疲れさまでした (2022年10月16日 9時) (レス) @page25 id: 3be08e9739 (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 桜葉さん» ひええありがとうございます〜〜；；魅力的だなんて……！！ (2022年10月13日 18時) (レス) id: 7957da95fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あ | 作成日時：2022年10月10日 3時
