五条side ページ5
内心、嬉しいと思っていることを知られたくない。車に乗ったあとは寝たフリを決め込んだ。
それでもソワソワする気持ちは抑えられずに窓をあける。
『悟は、強いんだよね』
話しかけられたことに驚き、少し動揺する。
「当たり前」
『心強いよ』
あ、笑った。
目を細めて綺麗に笑う彼を見て、抱きしめたい欲に駆られる。こんな表情を見れるのはきっと自分だけ。
「任しとけ」
会話が終わる。少し寂しい気もするが、何故か沈黙が落ち着き、和らぐ。
彼といると、ただの高校生になったような気分になる。全てをさらけ出して、縋り付いてしまいたくなる。
悶々と考えているうちに目的地についた。
呪霊を取り込むとは言っていたが、彼の体よりも大きい呪霊が吸い込まれていく様はなんとも奇妙だった。
その綺麗な顔は悲痛に歪み、額には汗が滲んでいる。
呪霊を取り込む行為は、彼の魅力を下げるどころか更に上げていた。
『帰ろっか』
帰り道、座席に並び談笑する。手を伸ばせば、彼の手に触れてしまいそうなほどの距離。
話す度に微かに変わる表情を見つけるのが楽しい。
嗚呼、最強なんて捨てて彼のそばにいたい。
きっとそんな日は来ない。そうわかっていても、彼の隣はあまりにも心地がいい。
そばにいて欲しい。
いつか、その隣に見知らぬ女が座り、彼からの愛を独占することになったとしても。
だが、弱さは見せない。
今はまだ、彼の前では最強の五条悟でいたい。
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琴葵(プロフ) - 主人公さんのどうか、笑う未来がありますようにと願わずにはいられない作品でした。とても、とても惹かれる物語でした。更新してくれて本当にありがとうございます。 (11月8日 12時) (レス) @page30 id: 2a7eef1005 (このIDを非表示/違反報告)
ああ - 感動しました。学校に行く前に読ませていただいたのですが号泣しすぎて目が赤くなりました。 (11月1日 7時) (レス) @page30 id: 951a2a07c6 (このIDを非表示/違反報告)
nono(プロフ) - まじで泣く え、あの続編書いてほしいですね。文章力高いので行けると思います。この、死んじゃった子が生まれ変わって再開する的な?感じの作って欲しいです。良かったらですけど。 (10月8日 20時) (レス) id: 9ef243ee9f (このIDを非表示/違反報告)
氷姫(プロフ) - 泣いちゃいました。 (9月30日 23時) (レス) @page30 id: ae94d75975 (このIDを非表示/違反報告)
悠(プロフ) - めちゃくちゃ泣いてしまいました (8月16日 23時) (レス) @page30 id: d0878bcbf4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろ | 作成日時:2023年7月15日 20時