夏油side ページ27
卒業してすぐ、フリーの術師になった。
Aの死。慕ってくれていた灰原の死。
離反しても良かった。
だけど、彼が居ないのならそんなことをする必要も無い。こんな世界、良くなろうと悪くなろうと。どうでもいい。
それに、悟と硝子をよろしくと託されてしまった。
彼は私が悪になったとしても受け止めてくれるだろう。
今はもういないけど。
彼がいたら、その肩に身を預けたい。
寝れそうだと思っても、君は私の夢の中にも侵入してくる。
実は悟と硝子のイタズラで、「ごめんね」と申し訳なさそうに謝るA。
怒らないよ。君が生きていてくれるなら。
目覚めると、この現実を受け止めなければならなくなる。
君の肩じゃないと寝れないんだ。
彼への感情を言葉で表すことは出来ない。
愛よりも深く、ドロドロしていて、執着に近いほど依存していた。
彼のいない世界に慣れるまで大分時間がかかってしまった。
どうしようもなく辛くなった時、瞼を閉じれば彼がいる。
『大丈夫?』
彼はそう言い、私を優しく抱きしめる。
それだけでこれからも生きていけると思える。
私も成長して、彼を思い出して泣くことも少なくなった。
静かに泣いている時、彼が駆け付けて来てくれないのが辛くて。彼の綺麗な声が私を呼ぶことは、もうないから。
そういえば、君にそっくりな人を見かけたことがあるよ。君の方が綺麗だったけど。
雰囲気が似てたんだ。
悟が確認もせず、急に抱きついて、大変だったんだよ。
いつも悟を止める役は私だけど、その時だけは私も理性なんか吹っ飛んじゃって。硝子には迷惑かけた。
声を聞くと、やっぱり君じゃなくて。
分かっていたけど探してしまうんだ。
今でも思うんだ。
あの時、もっと強く起こしていれば、Aは起きてたんじゃないかって。
おはようと、笑ってくれたかもしれないって。
馬鹿だよね。
悟はともかく、私がこんなに馬鹿になるのは君のことだけだよ。
気づいてたでしょ。
分かってて、あんな風に笑いかけてたんだよね。
私が離れられないの分かってて、さらに傷が深くなるように、執着させたんだろ。
そんな事、絶対にないってわかってる。
だけど、そっちの方がいいよ。
Aも私に執着してくれてたって思えるから。
彼は死ぬまでも、死んだあとも、変わらず私の心を
乱して、落ち着かせて、安心させる。
A。
次会うときは、沢山褒めて欲しい。
君のいない世界で、耐えて来たんだから。
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琴葵(プロフ) - 主人公さんのどうか、笑う未来がありますようにと願わずにはいられない作品でした。とても、とても惹かれる物語でした。更新してくれて本当にありがとうございます。 (11月8日 12時) (レス) @page30 id: 2a7eef1005 (このIDを非表示/違反報告)
ああ - 感動しました。学校に行く前に読ませていただいたのですが号泣しすぎて目が赤くなりました。 (11月1日 7時) (レス) @page30 id: 951a2a07c6 (このIDを非表示/違反報告)
nono(プロフ) - まじで泣く え、あの続編書いてほしいですね。文章力高いので行けると思います。この、死んじゃった子が生まれ変わって再開する的な?感じの作って欲しいです。良かったらですけど。 (10月8日 20時) (レス) id: 9ef243ee9f (このIDを非表示/違反報告)
氷姫(プロフ) - 泣いちゃいました。 (9月30日 23時) (レス) @page30 id: ae94d75975 (このIDを非表示/違反報告)
悠(プロフ) - めちゃくちゃ泣いてしまいました (8月16日 23時) (レス) @page30 id: d0878bcbf4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろ | 作成日時:2023年7月15日 20時