哀悼歌 ページ33
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波の音が遠ざかる。
長い腕に抱きすくめられ、その広い背中を、両腕で縋るように抱き返したわたしは。
ああ、ようやく終わったんだと。
永い、永過ぎた夜が明けていくのを、曇りのない気持ちで見上げていた。
身体が軽くなった気がした。
ずっとずっと泣きやむことを忘れていた少女の自分が、ゆっくりとほどけてゆく。
わたしをがんじがらめにしていた何かが、するりと、するりと。
哀しみの上に続いた恋は、今やっと結末を迎えることができたのだ。
「忠義」
ふたりは額を重ねる。
日に透かしたビー玉を覗くみたいに、見つめ合う、光と風の中で、指と指とを強く絡め合う。
「ありがとう」
わたしは笑った。
忠義もまた、笑っていた。
「……ばいばい」
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わたしは彼に背を向け、堤防をまっすぐに歩き出す。
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遠ざかる気配。
過ぎてゆく気配。
さよなら。
…………さよなら。
足を踏み出した途端にあふれだした涙はまるで、いつか見たさくらの花びらのように。
頬を伝ってひらひらと地面に落ちていく、それはでも、引きずるようにもわたしがきちんと彼に恋をしていた証だ。
「……あ」
ふいに、どこまでも続く日向に影が差した。
空を仰ぐ。
わたしはおどろいて目を見張った。
痛いほどの光、たいように重なる___________あれは、あのシルエットは___________
「……孔雀……」
その鳥は飛翔する。
羽根を広げ、尾を伸ばして。
過去に溺れた盲目の恋を弔うように。
それは羽ばたき、遥か海の彼方へと飛び去っていく。
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降り注いだ羽音は、神からの哀悼歌。
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タルヒ(プロフ) - ショウタくん生きてて良かったです。兄弟って似るんですね。すばるくんも章ちゃんも好きにさせちゃう女の子ってどんな子なんでしょう笑 (2019年3月17日 13時) (
レス) id: d9b43e6eea (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - 多恵子さん» 多恵子さん！お付き合いいただきありがとうございました^ ^章大くんとすばるくんの仲良し兄弟、わたしもとっても大好きです。そう言っていただけるような作品が書けて本当に良かったと思います(TT)ありがとうございました！ (2018年8月30日 23時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - めちゃさん» めちゃさん！お付き合いいただきありがとうございました^ ^もったいないお言葉…うれしいです。書いてよかったと心から思います(TT)次はもっと楽しんでいただける作品が書けるよう頑張りますね！ (2018年8月30日 23時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
多恵子(プロフ) - 完結お疲れさまです。章大くんが弟思いで死んじゃうところで思わず涙が出てしまいました、…こんな素敵なお話をありがとうございます。最後の、すばるくんの後五年まっとけ、は章大くんと似てるのか似てないのか。全てのキャラが素敵でした。ほんとに楽しかったです！ (2018年8月29日 8時) (レス) id: 2178e0ef46 (このIDを非表示/違反報告)
めちゃ(プロフ) - 完結お疲れ様でした。なかなか難しいお話でしたが引き込まれていました。行った事のないはずの景色が見えるようで登場人物がどれも素敵で。それからいつの頃からか私の頭の中にまで「ノスタルジア」が鳴ってました。また次作楽しみにしています。 (2018年8月28日 22時) (レス) id: 994f71b8c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年4月1日 18時
