愛と合図【M!LK】 ① (ページ10)

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結果的に、佐野先生の助力もあり、家庭裁判所や警察で色んな面倒な手続きを介して、彼は私が引き取ることになった。
期間もかなりかかったし、やったことのない手続きなんかでかなり疲れてしまったが…。
でも、その間も彼の記憶は戻ることはなかった。
だけど、それより驚いたことが、彼が私の家に行くのを承諾してくれたことだ。

行く当てもないし、彼なりに施設に入るのが嫌って気持ちもあったのかもしれないし、本人は何も言ってくれないから本当のところはわからないが、なんだかちょっと嬉しかった。
私の前ではずっとうつむいて悲しげな表情を浮かべているけど、ちょっとは私に心を開いてくれているのかな？

「はい到着。ここが私の家ですよ。狭いけど」

我が家のマンション。
1LDKの家賃7万円。
すでにマンションの管理会社には連絡済みで、今月から二人分の家賃を払うことになるが、まぁ…。
私が決めたことだし、頑張ろう…。

彼はすこしびくびくしながら、私に促されるように部屋に入って行った。
すると、私の気配を感じ取ったのか、部屋の奥から私の飼ってる茶色のトイプードルが嬉しそうに息を荒立てながら走ってやってきた。
突然の茶色い毛玉の爆走に、彼はとても驚いた様子で、肩をびくっと上にあげて、首を縮めていた。

「うふふ、大丈夫。これは私のペットのバンビちゃんって言うの。バンビ、今日から家族が増えたわよ？」

メスのトイプードルで、名前はバンビ。
バンビは彼を見るや、尻尾を左右にブンブン振って喜んでいた。
こいつ、結構面食いだなぁ。

「触ってみます？」

彼は未知の生物と接触するかのように恐る恐るバンビの体に手を伸ばしていた。