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佐野「と、言うことらしいんだ。彼女、君の記憶が戻るまで、君を引きとって一緒に暮らしたいんだって。僕もね、そっちの方が君のためには良いんじゃないかって思うんだけど…。どうする？まぁ、多分かなり面倒臭い手続きになると思うんだけど」
佐野さんが教えてくれたのは、ちょっと驚くべきことだった。
あの人が、俺の為に…。
俺を引きっとって面倒を診てくれるらしい…。
どうするって、聞かれても、そんなの…。
「はい…。そう…したい…です…」
佐野「……。そっか…。わかった。そうと決まれば、僕も君たちの事、全力でサポートさせてもらうよ。記憶、戻るといいね…」
あの人と、これからもっと一緒に居れる…。
そう思うと、記憶がない辛さや苦しさや、怖さが、ちょっと和らいだ。
何なのかな…この気持ち…。
それから、俺は佐野さんに連れられて色んな所へ出向いて証言したり、話を聞いたりした。
そして、結果的にあの人の家に無事に引き取られることとなった。
嬉しかった。
ただ、嬉しかったんだ…。
でも、この気持ちをどう表現していいのかよくわからない。
あの人が迎えに来てくれても、何も言えなかった。
そして、彼女の家に通された。
知らないところ。
これからここで暮らすんだ…。
この人と二人で…。
嬉しかったんだけど、それをどう表現していいのか分からない。
言葉も出てこない…。
その時、目の前に茶色い毛玉がものすごいスピードで走ってくる。
俺はただただ驚いた。
なにこれ…。
「うふふ、大丈夫。これは私のペットのバンビちゃんって言うの。バンビ、今日から家族が増えたわよ？」
ペット…？
あ、でもなんか可愛いかも…。
触るとモフモフで気持ちいい…。
この子も悪い奴じゃなさそうだ…。
すると、彼女は俺の為に何か飲み物を入れてくれた。
ホットミルクだ…。
好きだったのかどうかも分からないけど、手に持ってみるととってもあったかい。
「ぷはー！おいしい！」
そんなにおいしそうに何飲んでるんだろ…？
「あぁ、これ？これはジントニックっていうお酒。私の大好きなお酒なの。あなたは…飲んでいい年齢かわかんないからまだ駄目ね」
お酒…。
俺って何歳なんだろ…。
10代？20代？
全然思い出せない…。
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年2月17日 15時
