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記憶喪失。
俺の記憶…。
あったはずの記憶…。
どこかへ消えてしまった、記憶。
「戻りますか…？」
「うーん…。まだ何とも…。ですが安心してください。できる限りのことはさせていただきます。私はあなたの担当医の佐野と言います」
そう名乗った彼は、優しく微笑んでくれた。
でも、俺はだからと言ってどうすればいいのかも分からない。
この先、このまま何もかも忘れたままだったら…。
俺って一体何なんだろう…。
怖い…。
何も分からない恐怖が俺を包んでいく。
佐野「今は不安でしょうが…気を落とさないでください…」
そんな同情するような顔で見ないでくれよ…。
もっと不安になる…。
佐野「少し、席を外しますね」
置いていかないでよ…。
医者なんだったら俺を助けてよ…。
誰か…。
助けて…。
見知らぬ場所で取り残された俺は、不安と恐怖にかられ、体をできるだけ小さくして身を守った。
すると、部屋の扉が開いて誰か入ってくる。
また見たことない人だ…。
一体誰なんだよ…。
あれ…？
いや、見たこと…あるかも…。
「け、怪我…。大したことなくて良かったですね！」
怪我なんて…今はどうでもいい…。
それより、俺が誰なのか、誰か教えてよ…。
「あ…。元気、出してくださいね…」
そんなこと、言われたって…。
―
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年2月17日 15時
