愛と合図【M!LK】 ① (ページ30)

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それから数日が経ったが、彼の記憶は全然戻らないけど、一緒に過ごして、沢山喋るようにもなったおかげで、段々彼の趣味嗜好がわかってきた気がする。
例えば食べ物だと、甘すぎるものが苦手で、コーヒーや抹茶みたいな苦みのあるものが好きみたい。
とことん渋い。
テレビ番組も、私が仕事中はバラエティより落語や将棋番組をよく見てるみたいで、後は読みもしないのに私が見栄で買っていた小説なんかを興味深く読んでいた。
あとは、映画にも興味を示してるようで、パソコンの動画投稿サイトで色んな映画の予告編をジント君に見せてあげたらいくつかの映画を見たがっていた。
だから、今日はジント君の為に映画をレンタルしようと思うのだ。

「ただいまー！ジント君が見たがってた映画借りてきたよー！」

ジント「え？！本当に？！ありがとう！」

「いいのいいの。家の事全部してもらっちゃってるし、バンビのお世話もしてくれてるしね！」

今やバンビは私よりジント君の方に懐いている。
何だったら、私とジント君の邪魔しないでって言ってるような気さえする。
それにしても、ジント君も嬉しそうに笑ってる。
そんなにこの映画が観たかったのか…。

ジント「うわぁ！これ、一番見たかった奴！」

そして、リビングで映画鑑賞会が始まった。
ソファをテレビの前に持ってきて、ジント君と隣り合わせで座る。
なんだかこんなの新鮮。
いつもはテーブルで向かい合わせに座っているし、こうやってこんなに近づいて座ることなんてほとんどない。
ちょっと、心臓がどきどきするのはなんでかな…。

横目でジント君をちらっと見てみると、すでに映画に夢中みたい。
真っ直ぐに食い入るように画面を見つめている。
そして、彼の膝の上にはバンビがちょこんと座っていた。

何よ、そのどや顔は。
まるでジント君は私のものよって言いたげな顔ね…。

いつもは可愛いバンビがこの時ばかりはちょっと癪に触ってしまった。
ダメダメ。
犬に嫉妬するなんてばからしい。
私も映画見よっと。
そう思って観てみたのだけど…全然面白くない…。

でも、ジント君は固唾をのんで観ている。
次第に私は映画の内容にこれっぽっちも興味がなくなってしまい、急激に睡魔が襲ってきた。

駄目だ…。
このままじゃ…

寝ちゃう…

…

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